これまで坂本龍一さんのオペレーターを担当し、レコーディング、ライブなどの活動に参加。以降、槇原敬之さん、福山雅治さん、藤井フミヤさんら日本を代表するアーティストのプログラミング、作編曲に関わる。
さらに、声優の坂本真綾さん、花澤香菜さん、JUNNAさん、鈴木みのりさんといった声優・アニソンアーティストのライブへも参加。一方で、アニソンなどに特化したカバーバンド「毛利泰士とザ・ベスト」を結成し、こちらも精力的に活動中。
大学卒業後、青木淳建築計画事務所に入職。2002年に独立し、永山祐子建築設計を設立し、「ルイ・ヴィトン 大丸京都店」「東急歌舞伎町タワー」など数々の著名な建築物を手掛ける。
これまで多数の受賞歴に加え、2025年12月には、月刊誌『日経ウーマン』が各界で目覚ましい活躍を遂げた女性を表彰する「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2026」で大賞を受賞。
慶應義塾大学経済学部卒業、三菱総合研究所で主に自動車メーカーや国内外政府機関へのコンサルティング業務に従事した後、2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院よりPh.D.を取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授。
2019年より早稲田大学ビジネススクール教授。
テレビ東京『ワールドビジネスサテライト』のコメンテーターを務めるなど、TV出演も多数。
1994年生まれ、滋賀県出身。大学在学中、学内で開催されたミスコンテストで準グランプリを受賞。
SNSのマーケティングスキルを活かしタレント・インフルエンサーとして活動を開始。卒業後はITベンチャーで広報部の立ち上げを担当。自社PRだけでなく、業界啓蒙やファンベースを生かした広報活動を経験。松竹芸能所属。
音楽プロデューサーの毛利泰士さんと、建築家の永山祐子さんを迎え、「美」をテーマにディスカッション。日本を代表するアーティストの楽曲を多く手掛けてきた毛利さんと、「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2026」の大賞を受賞された永山さんに、経営学者・入山章栄さんが迫ります。
文化はアーカイブから生まれる 音楽とデザインに共通する課題
今、「アニメソングは文化だ」とよく言われていますが、個人的な感覚としては、アーカイブがきちんと整っていない段階では、まだ文化になっているとは言えないのではないかと思います。
毛利
文化にするためには、やはりアーカイブが重要ですよね。日本はその点がかなり弱いと思います。アートや建築でも同じで、海外の美術館では建築の模型まで美術品としてきちんとアーカイブされていますが、日本ではそうした仕組みがあまり整っていません。
永山
保存やアーカイブに対する意識が弱く、作品や資料が短い期間で消費されてしまう傾向にあります。消費だけが続く状況では文化として定着しませんし、時間をかけた積み重ねによる深みも生まれにくくなり、大きな課題だと感じています。
永山
新しい作品はこれからもずっと生まれ続けていくと思います。アニメは作品として更新され続けていく分野ですが、アニメに付随する音楽は、アニメ文化の一部であると同時に、長い歴史も持っています。
たとえば、クラシック音楽はクラシックとして体系的にアーカイブされていますし、アーカイブの存在によって、現在でも多くの演奏家が作品を演奏し続けています。
毛利
レコードやCDがあるから過去の演奏を聴く事ができますし、音楽である以上、誰かが演奏を続ける事で文化が継承されていく仕組みが成立しています。
ただ、文化として継続させるためには、権利の問題を含めてきちんとした土壌が整っていないと、世代ごとに理解できる作品が分断されてしまいます。世代間の繋がりが断たれた時、それは本当に文化と呼べるのだろうかと感じる事があります。
毛利
現在は多くの分野でアーカイブの問題が議論されています。アーカイブを維持するためには資金や人材といった体力が必要ですし、物理的な資料の場合は保管場所も必要になります。
日本にはデザインミュージアムが存在しません。結果として、デザインのアーカイブがどんどん消失していく問題も起きていて、デザインの歴史が体系的なアーカイブとして残されていない状況にあります。デザインミュージアムを設立しようとする動きはありますが、アーカイブを残さなければ、単なる消費として流れてしまいます。特にデザインは変化が速く、保存の仕組みがなければ資料も急速に失われていきます。
一方、海外ではアーカイブが進んでいて、日本の重要なデザイン資料が海外に渡るケースもあるため、今後しっかりと考えていく必要があると思います。
永山
建築家・永山祐子が語る「重力とスケール」の重要性
建築業界でも、今後AIは活用されていくと思います。他の分野と比べると導入が遅いと言われる事もありますが、建築に使われている材料や技術自体が急速に進歩しているわけではありません。もし建築物の全てを3Dプリンターで作れるようになれば、近い将来、実際の建築現場でもAIが利用できると思います。
建築基準法の枠組みで見ても、現在は鉄骨造(S造)、RC(鉄筋コンクリート造)、SRC(鉄骨鉄筋コンクリート造)といった構造が中心で、50年ほど前から大きな変化はありません。実際の建築現場を見ても、10年前とほとんど変わらない風景が広がっています。その意味では、建築は技術の進み方が比較的ゆっくりな業界だと言えると思います。
永山
個人的にもう少し早い変化があっても良いとは思いますが、建築は何十年も使われるものなので、急激に変わると前の技術では修理が出来ない可能性もあります。
また、コンピューター上で作られる世界には基本的に重力がありません。一方で建築には重力があり、身体というスケールも持っていて、重力とスケールが建築にとって最も重要なポイントです。
永山
究極的に言えば、建築は重力とスケールの世界だと思っていて、コンピューターの世界はそこから解放された世界で、建築とはある意味で対照的な存在です。
そのため建築では、重力とスケールの存在がより強い意味を持つようになり、「AIの世界」と「重力とスケールのない世界」との違いを明確に出せると思っています。
永山
以前、仮想空間のデザインを依頼された事があり、デザインを進める中で「仮想空間には重力が無い」と気づき、階段のような構造を作りました。しかしよく考えると、仮想空間ではワープをすれば移動ができるわけです。
それでも最初に作ろうとする空間は、重力のある現実世界と似た構造になってしまいます。
永山
デジタルの仮想空間は本来ほとんど制約が無い世界ですが、人間は無意識に重力を感じさせる空間を作ってしまいます。その理由は、現実のフィジカルな体験を疑似的に再現しようとする感覚が働いているからだと思います。
そして、フィジカルな体験を本当にリアルに感じられる場所は現実の世界だけです。重力が存在する事実そのものが、デジタルの世界との決定的な違いなのだと思います。
永山
音楽と建築から考えるAI時代のクリエイティブ
AIについて言うと、音楽の世界ではここ3か月ほどで大きなブレイクスルーが起きました。生成音楽AIのあるソフトウェアがアップデートされたことで、作曲の精度が一気に高まりました。
現在、YouTubeなどでは「この曲を○○風にしてみた」といった動画が急増しています。楽曲データをソフトウェアに入力し、「この曲をこういう雰囲気にしてほしい」とプロンプトで指示すると、10分ほど待つだけでCDのようなクオリティの音源がが出来上がります。
毛利
音楽制作の経験が無い人でも曲を作れる時代が既に始まっています。
毛利
AIは、過去の優れた作品を大量に取り込みながら学習した結果として生まれた技術だと思います。ここ20年以上、パズルのように音楽を組み立てる作り方が増えてきた話をしましたが、現在は音楽の歴史や理論を詳しく知らなくても、素材を集めて組み合わせる事で楽曲を作れる環境が広がっています。
パズル型の方法だけで音楽制作を続けてきた人にとっては、AIは脅威に感じられるかもしれません。一方、音楽の歴史を学びながら制作してきた僕らの世代にとっては、AIはむしろ使いやすいツールになる可能性もあります。個人的には、AIに対して強い危機感は持っていません。
毛利
最終的にはセンスの良い音楽が残っていくのではないかと感じていて、個人的にはその流れを楽しみに見ています。
毛利
今後、さまざまな分野でAIに置き換わっていく部分はあると思います。ただ、現在の建築の現場では、どうしても人が関わらなければ成立しない部分が残っています。
一方で、3Dプリンターによる建築の実験も進められていて、建築の工法が変化する部分に関しては、大きな転換期を迎えていると感じています。
永山
その可能性はあると思います。アーカイブの問題とも関係しますが、過去の建築資料をもとにデジタル空間で建物を再現する「デジタルツイン」という方法があります。
デジタルツインを活用したアーカイブが進めば、世界中のどこからでも名建築を体験できる新しい仕組みが生まれるかもしれません。過去の建築を実際に体験できる環境が整うと、建築文化にとっても大きな意味を持つと思います。
永山
AIが制作の過程まで見せられるようになったら、教育の面でもすごく面白いかもしれないですよね。
毛利
AI時代に残る「人間の価値」とは?
たがえみ
AIの登場によって便利になった部分もある一方で、これからの時代に人間に求められる役割は何になるのでしょうか?
私自身は、これからは倫理観がこれまで以上に重要になるのではないかと感じていますが、お二人はどのように考えていますか?
最終的には利他的な姿勢に行き着くのではないかと思います。誰かが幸せになる事や、「こうしたら楽しいよね」と感じられる方向でAIを使うと、AIの価値も活かしやすくなります。
人を貶める方法を探すよりも、生活を便利にする方法や誰かを喜ばせる方法を探す使い方が増えていくと、データがAIにも蓄積されていきます。AIが提示する答えも、自然とポジティブな方向へ寄っていくかもしれません。社会全体がよりハッピーな方向へ進んでいくと良いと思います。
毛利
自分自身が思い込んでいる考え方を、多角的に見たらどうなんだろうと感じる時にはAIに意見を聞く事があります。AIを通して、社会の平均的な考え方をある程度知る事はできると思いますが、個人の想いまでは入りにくい部分があります。
数学で言う「特殊解」のような発想を考える役割は、人間に残されていくのかもしれません。AIは、既存の流れの延長線上にある未来を予測できると思いますが、ポーンと飛ぶような発想を生み出す事は難しくなるので、AIでは「予感」のようなものが作りにくいのではないかと思います。
永山
今後は、フィジカルな体験を求める人が増えていくのではないかと思います。デジタルやAIの世界では、身体を使った体験がどうしても置き去りになりがちです。
人間は本能的に、身体で感じる体験を求めてしまうものだと思うんです。
永山
大阪万博についても「開催する意味があるのか」という議論がありましたが、実際に会場を訪れると、空気感が違いますよね。
永山
場と空気、その瞬間が全て揃わないと作り出せないので、フィジカルな体験が持つインパクトは、これからの時代でも変わらず大きな意味を持ち続けると思います。
永山