牧 兼充
- Kanetaka Maki -
早稲田大学ビジネススクール准教授
主な兼職として、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)監事、カリフォルニア大学サンディエゴ校ビジネススクール客員准教授など。
入山 章栄
- Akie Iriyama -
浜松町Innovation Culture Cafe マスター
経営学者
田ケ原 恵美
- Emi Tagahara -
浜松町Innovation Culture Cafe 見習い店員
目次
今回の浜松町Innovation Culture Cafeは、マスターの経営学者・入山章栄さんが常連客となり、早稲田大学ビジネススクール准教授の牧兼充さんを迎えて、「科学技術」をテーマにディスカッション。牧さんの研究分野でもある「スター・サイエンティスト」の実態や、日本とアメリカにおけるディープテック分野、ビジネススクールの違いについて迫ります。


















基本的には「高いパフォーマンスを持つ論文を数多く発表し、引用数を多く獲得している研究者」を指します。ただし、明確に一つの定義があるわけではなく、論文ごとに測定方法が異なります。
私の場合は、全ての論文を21の研究分野に分類し、それぞれの分野で引用数の高い論文を多く生み出している「上位3%程度の研究者」をスター・サイエンティストと定義しています。


































ベンチャーキャピタル(以下:VC)の多さなどはあまり関係なく、個々のスター・サイエンティストの存在が大事であり、スタンフォードやハーバードといった特定の大学が強いというより、スター・サイエンティストがいる大学や地域が強い事が明らかになりました。彼らは優れた研究者であるだけでなく、ビジネスやイノベーションを生み出す存在でもあるのが、成功研究でありました。
私が日本に戻ってきた際、日本のイノベーション政策を変える方法の一つとして、日本にどれくらいスター・サイエンティストがいるのかを把握し、それを基盤に政策形成すれば、新しい流れを生み出せるのではないかと思い、JSTの資金を受け、スター・サイエンティストの研究を進めました。






































地方創生の観点から見ても、スター・サイエンティストの周囲に作業が生まれるのはとても重要だと思っています。



















今後はより科学技術に基づいたベンチャーが出てくる必要があって、世界はすでにその流れにあります。日本も本来はそこを目指していて、鍵になるのが大学にいる「スーパー教授」なんです。
東京大学や京都大学に限らず、日本各地の国公立大学や私立大学にも優秀な研究者がいます。アメリカでは、そうした研究者からスタートアップが生まれてきましたし、日本でもその動きはすでに始まっています。



















































































一方で日本は、ポスドク問題や「博士に進んでも収入が安定しないのでは」といった雰囲気があり、思ったほど増えていないのが課題です。




































本来、優秀で情熱のある研究者がいても、特に自然科学の分野では実験設備などに多額の資金が必要ですし、資金がなければ研究もできません。そこで「起業する」選択肢が出てくるわけです。
国からではなくVCから資金を調達して、研究と事業化を両立させる。こうした形で日本の優れたスター・サイエンティストや候補者が活躍していくと、とても面白い仕組みではないでしょうか。
なぜなら、VCから資金を受けた瞬間に始まり、10年以内に成果を出さないといけないからです。多くの場合、10年では成果が出ない研究が多いです。初期費用は比較的得やすいですが、5年ほど経つとVCと投資家との関係が難しくなっていく点は大きな課題です。



















そして3つ目が、その技術を見抜く知見が無いこと。スター・サイエンティストが扱う最先端の研究を理解し、将来性を見抜ける投資家が必要ですが、日本ではまだ少ないんですよ。アメリカのモデルナでは、ロバート・ランガー氏の技術に対して投資したVCたちも博士号を持ち、最先端の科学を理解できるので投資判断ができたわけです。
一方で日本は、起業する側にはスター・サイエンティストが出てきているものの、投資する側に同レベルの専門性を持つ人材がまだ少ないわけです。
アメリカのスター・サイエンティストで優れている点は、その研究室のOBがVCになっている事です。研究分野を理解していて、研究室の出身者が投資家側にいるので、エコシステムにも連続性があるわけです。















































マーケティングの専門として採用されると、その後もマーケティングの専門家としてキャリアを積んでいく。転職する際も、マーケティングの人材として見られるため、別分野への転職は簡単ではありません。そこで、MBAでファイナンスを学ぶと、ファイナンスの専門家として認識されて、ジョブチェンジが可能になるわけです。
一方、日本は「メンバーシップ型雇用」です。同じ会社の中でマーケティングや営業、人事などを行うので、職種が固定されません。さらに終身雇用が前提で、企業が社員の成長に投資する構造があり、外部でMBAを取る必要性が低かったんです。
しかし、近年は終身雇用が揺らぎ、企業の将来も不透明になってきた事で、転職も含めて自分の市場価値を高めようとする結果、日本でもビジネススクールを志望する人は増えていると感じます。アメリカと日本ではMBAの役割や目的がかなり異なる、というのが私の考えです。



















アメリカで見られる、Ph.D.ホルダーがMBAを経てイノベーション領域に進む流れが、日本でも少しずつ生まれてきていると感じます。非常に興味深い動きですね。



















































日本は学費も安くはありませんし、多くの人が自費で通っています。その分、授業の要求度も非常に高いです。






























































今、MBAの人気が下がっている中で、学部レベルでビジネスを学んですぐに起業するケースや、大手企業でビジネスを行いたい30代から40代向けの「エグゼクティブMBA」などは需要が伸びています。
一方、日本は雇用の仕組みが今までと変わってきているので、今は社会人大学院で20代後半から40代前半の層で、MBAへの人気が高まっています。
特に大きく伸びているのは、データサイエンスの分野です。データを扱うスキルへの需要は非常に高いと思います。

































