牧 兼充
- Kanetaka Maki -
早稲田大学ビジネススクール准教授
主な兼職として、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)監事、カリフォルニア大学サンディエゴ校ビジネススクール客員准教授など。
入山 章栄
- Akie Iriyama -
浜松町Innovation Culture Cafe マスター
経営学者
田ケ原 恵美
- Emi Tagahara -
浜松町Innovation Culture Cafe 見習い店員
目次
今回の浜松町Innovation Culture Cafeは、マスターの経営学者・入山章栄さんが常連客となり、早稲田大学ビジネススクール准教授の牧兼充さんを迎えて、「科学技術」をテーマにディスカッション。サイエンティストたちから見たビジネススクール、科学技術が抱える構造的問題、次世代イノベーションの本質について迫ります。

















































もちろん、それ自体には大きな価値があるのですが、サイエンティストの視点からすると「どこまで裏付けがあるのか」と感じてしまうんですね。
























AIは、単に使う事自体が目的ではなく、AIを活用してビジネス上の意思決定を行う事が本質です。そのトレーニングの重要性が今までよりも重要になっていますし、それに対応できる授業やゼミの必要性も増しています。































































その頃に「牧さんはコロナ前からオンライン授業をやっている」と聞いて、緊急事態宣言前に彼の研究室を見に行ったんです。既にしっかり運用していて、数ヶ月後にはグリーンバックまで使っていて、結構お金もかけている。「これは今から絶対必要じゃないか」となって、すぐ緊急会議を開きました。
牧さんに教えてもらいながら、オンライン授業へのデジタル投資が決まって、結果として日本の大学の中でもかなり早い段階で、オンライン授業に切り替えたと思います。





























































































もう一つは、生成AIが登場した直後に、MBAの修士論文を提出した学生たちに向けて、「皆さんは生成AI以前の時代に修論を書いた最後の世代です」と伝えました。翌年からは評価基準を変えないと、同じ基準では評価できない話をして、実際に指導方法や論文の評価基準を見直しました。





























































その上で、MBAの学生たちが実際にその技術をもとに、どんなマーケットがあるのかを調査する授業を行っています。想像以上に学生からの評判も良くて、「こういう事をやってみたかった」という人が多いんだと感じています。実際に、そこから新しいビジネスが生まれるケースも出てきています。
特にビジネススクールは、同級生にさまざまな業界の人が揃っているので、新しいアイデアを思いついた時にヒアリングもしやすいんですよね。そうした意味でも、この取り組みは大きな価値があると感じています。



























































































加えて、研究所は地方にある事も多いので、本来であれば多様な人と出会い、ビジネスの機会に触れる事で可能性は広がるはずです。スター・サイエンティストになり得る人材が、今どこにいるのかが大きな課題だと思います。そして2つ目は、インセンティブの問題です。





































一方、アメリカは薬価が高く、特定の人にしか良い薬が流通しないけど、ビジネスとしては成立しやすい。日本では良いスタートアップが出にくいので、日本で成功した企業が、途中からアメリカに拠点を移すケースもあります。
「薬価を上げるべきだ」と単純に言いたいわけではありませんが、研究者がビジネスに挑戦しやすくなる仕組みをどのように作っていくかが、日本の大きな課題です。
































































































































UTEC(東京大学エッジキャピタル)のようなベンチャーキャピタルもあるので、東大には多くのベンチャーが生まれています。それと比べて、早稲田はまだもう少し頑張る必要がありますよね。
















































その結果、アメリカではスター・サイエンティストとして、ビジネススクールの教員がスタートアップを立ち上げるケースが増えています。以前は、社外取締役やコンサルティングが主な外部活動でしたが、今は自ら起業するケースが増えていて非常に面白い変化だと思います。







































アメリカのダイナミズムは人材の流動性で成り立っていて、もちろんデメリットもありますが、メリットの方が大きいわけです。一方、日本は終身雇用の文化もあり、人が長く同じ場所に留まる傾向が強かったので、人材の流動性を高める事がイノベーションを起こすために必要だと思っています。
もう一つは、やはりインセンティブです。成功すればきちんとリターンが得られる、失敗しても過度に損をしない。つまり「失敗のコストが低い事」が非常に重要です。アメリカでは失敗した時のコストが小さいんですよ。日本では失敗すると、お金以上に周りから「あいつは失敗者だ」と思われるんですよね。
これからはいかに失敗するかの方が大事ですから、そのための環境づくりが日本にとって大きな課題だと思います。
そのためには、日本の大学がマグネットのように世界中から人材を引き寄せられないと、スタートアップの多様性も広がりません。
























最近は、日本の企業がフィールド実験の研究対象としてとても人気で、海外の研究者たちから「日本の企業と共同で実験を行いたい」といった問い合わせも非常に多いです。
























東京のような都市では産学連携のマッチングもしやすく、世界的に見ても有利な環境なので、海外研究者を呼び込み、共同で実験を行う取り組みは、日本のイノベーションを大きく前進させる可能性があります。
さらに、スター・サイエンティストが活躍する特徴として「学際性」が挙げられます。単一の専門分野だけでなく、複数の分野を専門として持っていて、それらを組み合わせることができる人が、大きなインパクトを生む傾向にあります。
日本の教育は、一つの専門性を深める事に重きを置きがちで、これからは複数の分野を組み合わせる力を育てる必要があります。

















さらに興味深いのは、アカウンティング(会計学)の研究者が増えている点です。会計学そのものを研究しているのではなく、経済学の応用として会計学を扱うケースが多く、分野の枠組み自体が大きく変わっています。この10年でその傾向は一気に進み、学際的な研究もやりやすくなってきました。
日本も同じように分野の壁を越えていかないと、新しい領域やイノベーションは生まれにくいのではないかと感じています。

