大学卒業後、PHP研究所、ボストン・コンサルティング・グループ、ニューズピックスを経て、2022年にPodcast Studio Chronicleを設立。制作した番組は、JAPAN PODCAST AWARD ベストナレッジ賞を2年連続受賞するなど、その手腕は高く評価されている。番組制作をする一方で、ポッドキャスト番組「News Connect」をはじめとしてパーソナリティやメインMCとしても活躍。昨年10月には、クロスメディア・パブリッシングより「プロ目線のPodcastのつくり方」を出版。
大学院中退後、53回の面接を経て、ゴールドマン・サックス証券株式会社に入社するも、その年に発生した
リーマンショックで、壮絶な経験を。勤続17年間での、投資規模は投資金額ベースで、およそ4000億円、企業価値・資産価値ベースで1.2兆円を超える。2024年には退社され、現在は少数精鋭の投資会社にて、不動産投資の責任者を務める一方、2025年からは、interFMにて毎週月曜・朝5時放送の「Beyond K-point」のパーソナリティも担当され、こちらは2025年Apple Podcastビジネス部門で第1位を獲得。
慶應義塾大学経済学部卒業、三菱総合研究所で主に自動車メーカーや国内外政府機関へのコンサルティング業務に従事した後、2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院よりPh.D.を取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授。
2019年より早稲田大学ビジネススクール教授。
テレビ東京『ワールドビジネスサテライト』のコメンテーターを務めるなど、TV出演も多数。
1994年生まれ、滋賀県出身。大学在学中、学内で開催されたミスコンテストで準グランプリを受賞。
SNSのマーケティングスキルを活かしタレント・インフルエンサーとして活動を開始。卒業後はITベンチャーで広報部の立ち上げを担当。自社PRだけでなく、業界啓蒙やファンベースを生かした広報活動を経験。松竹芸能所属。
Podcast Studio Chronicle代表の野村高文さんと、元ゴールドマン・サックス投資部門日本共同統括の田中渓さんを迎え、「音声メディア」をテーマにディスカッション。2人が音声メディアに関わる原点となったラジオ体験やポッドキャスト市場が拡大する背景、音声メディアの可能性を経営学者・入山章栄さんが迫ります。
野村高文×田中渓 音声メディアの原点は「ラジオっ子」
思春期の頃からずっと聴いていて、ラジオ少年が通る番組は一通り経験しました。『オールナイトニッポン』(ニッポン放送)や『JUNK』(TBSラジオ)を中心に、AMラジオでお笑い芸人や文化人のトークをクスッと笑いながら聴いていました。
社会人になる頃からはFMラジオに移って、J-WAVEばかり聴くようになりました。当時、良い音楽と出会うにはラジオを聴くしかなかったので、誰もいないオフィスでラジオを流しながら働く感じで、生活の中にずっとラジオがありました。
田中
誰もいなくなった時間に、会社にスピーカーを置いて流していました。
田中
僕の世代だと、『オールナイトニッポン』では福山雅治さんやナインティナインさんの番組をよく聴いていました。
芸人さんはずっと追いかけているので、新しい方がやってきて、そこそこの地位に行くと必ず『オールナイトニッポン』を通るじゃないですか。その過程を見るのが好きなんです。
田中
私にとっての原体験は『荻上チキ・Session』(TBSラジオ)ですね。以前は『荻上チキ・Session-22』という名前で夜に放送されていました。その前には『ニュース探究ラジオ Dig』(TBSラジオ)で、荻上さんが週に1回担当されていて「とても分かりやすく話す方だな」と思って聴き始めました。
野村
私は若手社会人の頃にラジオを本格的に聴き始めたタイプで、10代の頃は野球中継を聴いていました。地元が愛知県なので、常に中日ドラゴンズの試合が流れている感じでした。社会派のラジオ番組から聴き始めて、経済や社会を扱う番組を中心に聴くようになりました。
野村
荻上さんの番組では、毎回専門家をゲストに招いて、新書1冊分の知識を1時間で語り切るコーナーをやっていたんです。
野村
フリートークというより順序を追って話をしていて、1時間聴くと一つのテーマが深く理解できる体験を若手社会人の頃に聴いて、「ラジオってこんな事ができるんだ」と衝撃を受けました。
野村
受け手として聴いた体験が心に残っていて、後に自分も出演させていただくようになって、「声はテキストよりもずっと届く」と実感したり、ラジオはエンゲージメントの高いメディアだと感じたりして、さらに深く関わるようになりました。
野村
あまり聴いてはいないですね。昔も今も、生活の中に自然と組み込まれている感覚です。朝起きたら帯番組でやっている番組を聴き続ける感じですね。その中でニュースやコーナーで深掘りがあって、自然と情報が入ってくるので、いずれにしても身近にある存在でしたね。
田中
テキストから音声の時代へ ポッドキャスト台頭の構造
来ていると言えば来ている、といった印象ですね。たとえば、2年前のアメリカ大統領選では、ポッドキャストが選挙結果に影響を与えたとも言われています。日本でも、2025年に著名な方がポッドキャストを始める動きがあり、特に文筆業の方々の参入が目立ちました。それに伴ってリスナー層も広がってきた印象があります。
毎年3月頃にポッドキャストにおける普及率の調査結果が出るのですが、ユーザー数はさらに増えているのではないかと感じています。「ポッドキャスト」という言葉自体の認知も、かなり広がってきたのではないでしょうか。
野村
いろいろな文脈で感じますね。まず一つは、若い世代の変化です。テキストを読む力や本質的な意味での識字率が全体的に落ちてきていて、流し読みはできても、深く読む事が難しくなっている印象があります。元々は映像で見ていたと思うのですが、「視覚を奪われるのが大変だ」という感覚から、「耳だけでいい」といった方向にシフトしてきているのではないかと思います。
発信者側も、これまでYouTubeは音楽やエンタメが中心でしたが、この2年ほどでビジネスコンテンツが一気に増えました。その中で「映像である必要はない」「耳だけで聴いている人が多い」という事に気づき、ポッドキャスト化する流れも出てきています。
さらに、少し意識の高い層、学びに前向きな人たちにとって、ポッドキャストは専門性が高く、好きなものを深く知るのに相性が良いメディアだと思います。話し手もいわゆるメディアの人ではなく、自分のブランドと信頼で発信している点も大きく、聞き手側も組織的なバイアスや忖度が少ないところから、きちんと情報を仕入れたいといった流れが来ている感じはします。
田中
テキストから音声へ、といった流れは本当にその通りだと思います。個人的にテキストが好きなので少し悲しいところはありますが、読みこなせる人の数が減っている実感はありますね。一方で、AI時代においてはテキストの重要性はむしろ高まっているとも感じています。
野村
読む人は減っているけれど、発信としてテキストもやるべきなのが私の考えです。田中さんの動画に関するお話で少し付け加えると、「YouTubeの空間があまり好きではない」という声をよく聞きます。
野村
サムネイルで煽るような雰囲気ですね。動画を再生されるための最適な戦略だと思いますが、その空間に自分が浸りたいか、発信者として参加したいかといった点で、抵抗を感じる人は意外と多い印象です。
野村
たとえば、職場でYouTubeを開いている人を見ると、「ちょっとサボっているのかな」と感じることがありますね。「ポッドキャストを聴いています」と言われると、「学習してるのかな」と思ったので、そういう印象の違いもあるのかもしれませんね。
田中
「人からどう見られたいか」というのは、発信の動機として大きいですよね。そう考えると、声で伝えたい方が一定数いるイメージですね。
野村
動画と音声は本来まったく別のものなんですよね。動画は視覚を奪うので競争も激しく、作業との両立も難しくなります。一方で音声は家事をしながら、移動しながら、運転しながらでも聴ける世界なので、動画側の人たちも音声へと流れてきているのではないかと思います。
田中
「人×テーマ」で読み解く 田中渓のポッドキャスト戦略
先ほど「専門性があるから面白い」と話しましたが、僕の番組ではむしろ、雑多にいろんな事を話してるんですよね。お金や投資だけでなく、習慣化や健康、睡眠、運動といったヘルスケア、ウェルビーイング、ライフハック、キャリアの話、さらに音楽なども扱っています。
田中
本来、ごちゃ混ぜになっている構成は好まれないと思っていて、ちゃんと専門性を決めて尖らせた方が良いと感じていました。でも実際には、どれか一つで突き抜けているわけではないけれど、それぞれをある程度深く掘り下げる人が、一つの言葉として何かを語る事に面白がってくれているのかもしれません。
もう一つは、いわゆるプロセスエコノミー、クリエイターエコノミー、ファンエコノミーのど真ん中を行った事だと思います。何でもなかった一般人が「ラジオをやりたい」とずっと言い続けて、少しずつ実現していって、最初は自分でお金を出して放送枠を買い、番組を始めました。
田中
番組内で「本気でスポンサー募集しています」と言い続けていたら、次々とスポンサーの方がついてくださって、応援したい気持ちや熱量が少しずつ集まったものが、広がっていった感覚があります。
田中
今はコンテンツが無限にあって、しかも未来が見通しにくい時代ですよね。そうなると「誰かの視点で物を見たい」という欲求があると考えています。誰の視点を借りたいかは人それぞれですが、田中さんの場合、これまでのキャリアや現在の生活も含めて「本物」のビジネスパーソンです。
田中さんが世の中をどう見ているのか、どう解釈しているのか、その主観自体に高い情報価値があって、情報が多すぎて迷ってしまう自分の指針になっている部分があるからだと思います。専門性に関しても、企画が「人×テーマ」の掛け算で成立すると思っていて、人の力が強ければ何を言ってもOK、弱い場合はテーマを際立たせる必要があります。
田中さんの場合、ご自身の専門性でも成立すると思いますが、田中さんの視点を借りたい点で「人」でも成立すると思ってます。ただ、世の中のほとんどの人は「人」の部分が強くないので、最初は専門性から入った方がポッドキャストとしては成功しやすいでしょうね。
野村
「テーマで入り、人で残る」 音声メディアの成功条件
一般論で言うと「テーマ」の方が入りやすいです。固有名詞を知らなくても、「このテーマなら聴きたい」が動機になりやすい一方で、徐々に「人」へ移行していく事も一般化しないためのポイントです。テーマだけに依存していると、より分かりやすい別のコンテンツに乗り換えられてしまいます。
テーマで興味を持ってもらえれば、リスナーは一定期間聴いてくれて、その間に人間そのものを好きになってもらえるかが大事だと感じています。
野村
僕自身も、プロデュースの仕方を意識的にそういうプロセスでやってきました。発信には大きく3つのフェーズがあると思っていて、最初は「情報屋さん」として役立つ事を言って、認知されてきたら少しずつ意見を言う。最初から意見ばかり言うと「うるさい人」になってしまいます。
それらを乗り越えて認知されるようになると、「何を言ってもいい人」になれて、「昨日食べたカップラーメンが美味しかった」とか、「街で見かけた猫がかわいかった」といった話でも愛されるようになります。だから最初はテーマで入って、最終的にはキャラクターに入っていきました。
深夜ラジオの『オールナイトニッポン』でも、パーソナリティが話すから、日常の暗い話でも聴きにきてくれるのだと思います。
田中
私は「本を作る」イメージで番組を作る事が多くて、番組タイトルが本のタイトル、メインパーソナリティは著者に見立てています。その上で「どんな著者が、どんなテーマを語れば手に取ってもらえるか」を最初に考えて、情報としての価値を作ります。
ただ、便利なものだけで止まっているのもダメで、少しずつ「この人いいな」という感情を乗せて、そのバランスをタイミングよく混ぜていく作り方をしています。
野村
『News Connect』に関しては、「平日5分で国際ニュースを一つ解説する」というフォーマットです。これは完全に「道具」として振り切っていて、誰が話しているか分からなくても、5分で国際ニュースが理解できるなら便利ですよね。
まずは道具に振り切って、聴き続けるうちに「意外と人間味があるな」と感じてもらえる設計にしています。
野村
まさにその通りだと思います。僕が話していたフェーズの考え方を、より再現性のある形に落とし込むと、今の野村さんの話になるんでしょうね。
最初はフォーマットや道具を使って、徐々に定着していった人たちが長尺にしたり、扱うテーマを広げたりしていくのが理想的な流れだと思います。
田中
「出演者」田中渓が語る、一人喋りの難しさと価値
面白さでいうと、これまでコンテンツだと思っていなかったものを言葉にして伝えられたり、受け手側の人が場合によっては「人生が変わった」と言ってくださったり、一対一のやり取りによって、ポジティブな変化が生まれるのは大きな魅力です。これまでの仕事はあくまでビジネスで、人の人生を直接変えるものではなかったので、その違いは強く感じますね。
一方で難しさもあって、以前は非常に専門性の高い仕事をしていたので、相手側もずっと専門用語で、ものすごいスピードで会話をしても成立していて、自分でも心地良いと感じていました。今は誰も置いていかない事を意識しているので、難しい話が出てきたら一度立ち止まって、専門用語や仕組みを説明する事もあります。
何よりも大変なのは、僕の場合、基本的に自分一人でやっていて、ディレクターが一人いるだけで、プロデューサー業務もAD的なことも全部自分でやっています。
田中
どんな番組にするか、スポンサー探しやゲストとの交渉、出演料の調整、トーク内容、選曲まで全部自分でやっています。いわばトータルプロデュースですね。好きでやっているんですが、一度全部やっておくと全体像が見えるので、将来的には誰かに任せられるといいなとも思っています。
田中
一番大変なのは、一人喋りなので完全に独白で、笑ってくれる人もいなければリアクションしてくれる人もいません。一人でバーをやっているのに、一人で壁に向かってずっと話している状態です。これは本当にしんどくて、構成の工夫が必要だと感じています。
田中
ADや放送作家の人がリアクションしてくれますが、それすら無いのでかなり孤独ですね。
田中
一人語りは本当に孤独ですよね。対話形式だと、相手が話している間に次を考えられますし、相手の反応からどこが面白いかも分かるので、一人でテンポをつけて話し続けるのは、かなり高度な技術が必要だと思います。
ただ、田中さんのお人柄は純度100%で伝わっていくじゃないですか。その純度の高さに対して、リスナーが受け取る価値の多さがあって、田中さんに心を惹かれている部分はあると思います。
野村