2026.05.27

異世界対談

【前編】カレー×餃子 国民食のビジネスと未来

【前編】カレー×餃子 国民食のビジネスと未来

印度カリー子

印度カリー子

- Indocurryko -

スパイス料理研究家
香林館(株)代表取締役

「スパイスカレーをおうちでもっと手軽に」をモットーに、スパイス料理研究家兼タレントとして活動される一方、スパイス初心者のための専門店・香林館株式会社を経営。初心者のためのオリジナルスパイスセットの開発・販売をする他、レシピ本の執筆、大手企業と商品開発・マーケティング、コンサルティングに携わるなど幅広く活動。著書の累計発行部数は44万部。JAPAN MENSAの会員で、2021年にはForbes JAPAN 30 under 30「世界を変える30歳未満の30人」にも選出。
塚田 亮一

塚田 亮一

- Tsukada Ryoichi -

東京餃子通信編集長

「餃子は完全食」のスローガンのもと、おいしい餃子を求めてどこまでも求め、首都圏だけでなく、宇都宮、浜松、福島などの餃子タウン、さらには世界中の餃子風料理を日々食べ歩く。これまで食べ歩いた餃子店の数は3000店以上。長年の研究からたどり着いた手作り餃子も評判。2010年には、餃子専門ブログ「東京餃子通信」を立ち上げ、編集長として活動。
入山 章栄

入山 章栄

- Akie Iriyama -

浜松町Innovation Culture Cafe マスター
経営学者

慶應義塾大学経済学部卒業、三菱総合研究所で主に自動車メーカーや国内外政府機関へのコンサルティング業務に従事した後、2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院よりPh.D.を取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授。
2019年より早稲田大学ビジネススクール教授。
テレビ東京『ワールドビジネスサテライト』のコメンテーターを務めるなど、TV出演も多数。
田ケ原 恵美

田ケ原 恵美

- Emi Tagahara -

浜松町Innovation Culture Cafe 見習い店員

1994年生まれ、滋賀県出身。大学在学中、学内で開催されたミスコンテストで準グランプリを受賞。
SNSのマーケティングスキルを活かしタレント・インフルエンサーとして活動を開始。卒業後はITベンチャーで広報部の立ち上げを担当。自社PRだけでなく、業界啓蒙やファンベースを生かした広報活動を経験。松竹芸能所属。

スパイス料理研究家・香林館(株)代表取締役の印度カリー子さんと、東京餃子通信・編集長の塚田亮一さんを迎え、「カレー×餃子 国民食のビジネスと未来」をテーマにディスカッション。 冷凍餃子の進化、カレーと餃子の意外な共通点、地方が抱える外食ビジネスの課題など、経営学者・入山章栄さんが迫ります。

スパイスカレーの次はビリヤニ? カレー業界の現在地

入山章栄
入山
カリー子さんが前回『浜カフェ』にご来店いただいてから5年が経ちました。この間、日本のカレー業界にはどんな変化がありましたか?
かなり変わりましたね。5年前はちょうどスパイスカレーがブームになり始めた頃でした。コロナ禍も重なって、自宅でスパイスカレーを作る人が一気に増えた時期です。

そこからコロナが明けて忙しくなり、時間をかけて家で作る人は徐々に減っていきました。ただ、その過程でスパイスの知識を持つ人はかなり増えました。その流れの中で、ここ1〜2年で特に注目されているのがビリヤニです。

ビリヤニは、インドや周辺地域でよく食べられているスパイスの炊き込みご飯で、ざっくり言うとカレーを濃縮したような味でご飯を炊いた料理です。スパイスカレーブームによって様々な派生が生まれた先に、新しい選択肢としてビリヤニが広がっている印象ですね。

印度カリー子
カリー子
入山章栄
入山
ビリヤニって、カレーなんですか?
ビリヤニは、カレーではありません(笑)。カレーではありませんが、たとえば、五目炊き込みご飯は煮物を濃縮してご飯と一緒に炊いたようなものですよね。だから煮物に詳しい人が語ってもおかしくない、並列の関係です。
印度カリー子
カリー子
入山章栄
入山
五目炊き込みご飯は、煮物かと言われたら違いますよね。カリー子さんから見ると、ビリヤニの台頭はカレーにとって脅威というより、”親戚”が出てきたぐらいの感じですか?
姪っ子みたいな感じです(笑)。カレー界から見ると、それくらいの距離感です。
印度カリー子
カリー子
入山章栄
入山
カレーにハマった人は、その次にビリヤニに行きますよね。
そうですね。進化系、派生系といった側面がありますから。
印度カリー子
カリー子
入山章栄
入山
私もビリヤニは食べますけど、あえて選びに行くほどではないんですよね。ビリヤニまで行く人と、カレーで止まる人の違いって何なんですか?
カレーやラーメン、餃子は本能的に誰が食べても美味しい料理ですが、ビリヤニはそうではありません。高級フランス料理は、鶏の唐揚げみたいに直感的な美味しさではなく、繊細さや組み合わせの妙を楽しみますよね。

ビリヤニもそれに近くて、元々は宮廷料理なので、王様を喜ばせるために工夫を重ねた料理なんですよ。

印度カリー子
カリー子
入山章栄
入山
つまり”俺は分かっている系”の人たちが行く世界なんですね。
“嗜む系”の料理ですね。だから、「ビリヤニおいしいですか?」って言われたら、おいしいと感じるかどうかは人によって違います。
印度カリー子
カリー子
入山章栄
入山
我々は嗜みませんからね(笑)。ちなみに塚田さんは、普段カレーは食べられます?
食べますよ。ビリヤニも会社の近くに美味しい店があって、時々行きます。
塚田亮一
塚田
入山章栄
入山
東京都内ではスパイスカレーの店がかなり増えましたよね。完全に市民権を得た感じがします。僕は丸の内にある「FISH」が好きで、よく行きます。
欧風カレーの店が減ったというか、目立たなくなりましたよね。今はスパイスカレーの店の方が多い印象です。
印度カリー子
カリー子
入山章栄
入山
それはなぜでしょうか?
アレンジ性が豊かで、お店の個性を出しやすいからです。欧風カレーは全部”カレー味”になってしまいますが、今流行っているスパイスカレーは”素材味”なんですよね。

たとえば、春菊のスパイスカレーを作るとしたら、春菊の風味がメインに出たカレーを作れます。一方で、欧風だと”カレー味の春菊”みたいなカレーになってしまいます。

印度カリー子
カリー子
入山章栄
入山
つまり、主役が素材かルーかの違いですね。欧風カレーは主役がルーになるけど、スパイスカレーは主役が素材だから、いろいろ差別化ができるわけですね。
最近は餃子でも、春菊や小松菜などをたくさん入れた素材系の餃子が出てきているので、方向性としてはかなり近いと思います。
塚田亮一
塚田
入山章栄
入山
一度成熟した市場では、次に差別化を図ろうとすると、素材で差別化する流れになるので、カレーも餃子も同じ方向に進んでいるわけですね。
差別化できないとビジネスとして成立しませんし、ビジネスの基本は唯一性やストーリーが重要です。その点でスパイスカレーはストーリーを作りやすく、広がったのだと思います。
印度カリー子
カリー子

フライパン一つで完成 冷凍餃子が変えた家庭の食卓

入山章栄
入山
塚田さん、最近の日本の餃子界隈ではどのような動きがありますか?
全体的に、餃子って流行り廃りが無い業界ではありますね。
塚田亮一
塚田
入山章栄
入山
餃子の○○ブームってあまり聞かないですよね。
たとえば棒餃子、鉄鍋棒餃子の「際コーポレーション」の大ブームがありました。あれは1990年代後半から2000年頃だったと思います。ほかにも「餃子の王将」のブームが来たりと、時々来るぐらいであまり大きなブームは無いですね。

最近の流れでいうと、冷凍餃子の進化がかなり大きく、バリエーションも一気に増えました。一時期は撤退するメーカーも多く、味の素の一強で、あとはPB製品しか並んでいない状態が10年ぐらい前までありました。

そこからお取り寄せ餃子が増えたり、「大阪王将」のイートアンドが様々な商品を展開したりして、今ではスーパーの冷凍コーナーでも餃子だけで棚が一列埋まるくらい種類が増えています。

塚田亮一
塚田
入山章栄
入山
餃子の場合は、冷凍食品の進化が大きいんですね。
今はフライパンに並べて蓋をするだけで、勝手に羽根ができて、綺麗に焼き上がる商品もあります。餃子に油も付いていて、中には蓋も要らないと言っているメーカーもあります。
塚田亮一
塚田
どれだけズボラに優しいんですか(笑)。
印度カリー子
カリー子
一人暮らしだとフライパンの蓋を持っていない人もいるので、それでもちゃんと餃子が焼ける事と、冷凍餃子は主婦の方がもう一品出す時にすごく便利に使われています。

電子レンジよりもフライパンで焼く方が”作った感”を得られる。フライパンで焼いて、綺麗な餃子を出すと家族も喜ぶので、そういった使い方もされていますね。

塚田亮一
塚田
すごく分かります。昨日はレトルトカレーを湯煎で食べましたが、今日はレンチンで食べたらすごく質素に感じて、一手間を加える感じは確かに重要だと思いました。
印度カリー子
カリー子
入山章栄
入山
レトルトカレーも進化しているんですか?
かなり進化しています。私がストックしているのは全部欧風カレーなんです。スパイスカレーしか食べない人だと思われがちですが、スパイスカレーは香りが重要なので、レトルトにすると落ちてしまいます。欧風カレーは香りが無くても全然良くて、スパイスカレーと欧風カレーの違いは、煮込むか煮込まないかなんですよ。

欧風カレーは、元々ヨーロッパのシチューがベースで、長時間煮込んで旨味を引き出して、特徴的な香りは丸くなっていくので、レトルトとの相性が非常に良いんです。

印度カリー子
カリー子
入山章栄
入山
スパイスカレーは、炒め物に近いですよね。
スパイスカレーのレトルトはまだあまりおいしくないですが、欧風カレーのレトルトは本当においしくて、そればかり買っていますね。
印度カリー子
カリー子
入山章栄
入山
塚田さんは、餃子の店では何か変化はありますか?
お店の方だと、高級路線を攻めるチャレンジを始めた餃子屋が出てきたぐらいです。お寿司屋さんのように餃子を一個一個出してくれたり、餃子だけでコースをやったりとかですね。
塚田亮一
塚田
入山章栄
入山
実際に行かれましたか?
おいしかったです。餃子でそのような経験をした事が無かったので、エンタメ的な要素でも楽しかったです。
塚田亮一
塚田
入山章栄
入山
味も違いますか?
そうですね。私が行ったのは北新地にできた店でしたが、焼き餃子だけでなく蒸し餃子など、使う食材も幅広かったです。
塚田亮一
塚田

カレー、餃子、ラーメン… 国民食に共通する食材とは

入山章栄
入山
実は少し前に「ラーメンvsお寿司」というテーマでやった際、ラーメンの専門家である井出隊長が、最近の課題として「ラーメンは原価がものすごく上がっているのに、高い価格で訴求できない。1000円を超えるとお客さんが来なくなる」と話していました。餃子とカレーはどうでしょうか?
ラーメン界隈の人と1度お話した時に、カレーにも全く同じ話題をぶつけられた事があります。カレー界隈も、元々欧風カレーはそうだったんですが、スパイスカレーが出てきた事で一気に価格帯が上がり、「カレーだけど別物ですよ」と付加価値をつけて打ち出せるようになりました。

その結果、欧風カレーも「無添加です」とか「これだけ煮込んでいます」といったこだわりを打ち出しやすくなって、カレー界隈は価格がかなり上がったと思います。

印度カリー子
カリー子
入山章栄
入山
ホテルのカレーとか、有名店だと2000円くらいしますよね。
餃子は1000円どころか、1皿400円くらいですね。5個か6個で400円を超えると「高い」と感じられる事が多いです。それ以上の価格で出しているお店もありますが、餃子は基本的にサイドメニューのイメージが強いです。

いわゆる街中華のお店が低価格を維持しているので、それが基準になっていて、なかなか価格を上げにくいですね。「餃子の王将」も多少値上がりはしていますが、それでもまだ1皿300円台で提供しています。

塚田亮一
塚田
入山章栄
入山
一方で、さっきおっしゃっていたような高級餃子も出てきているんですね。
そうですね。そういうチャレンジをする人がぽつぽつ出てきた段階です。
塚田亮一
塚田
入山章栄
入山
メインの市場はまだ低価格帯にあるわけですね。カレーとは少し違いが出ていますね。
たがえみ
たがえみ
ラーメンと餃子とカレーはみんな好きな食べ物という話がありましたが、国民食と呼ばれる理由についてはどのように考えていますか?
カレー、餃子、ラーメンの共通点って、「ニンニク」ではないかと思うんです。
印度カリー子
カリー子
入山章栄
入山
確かに、餃子とカレーにはニンニクが入っていますね。
ラーメンも、スープに入っていませんか?
印度カリー子
カリー子
卓上に置いてあって、ニンニクをたっぷり入れるスタイルのラーメン屋も多いですよね。
塚田亮一
塚田
入山章栄
入山
シンプルだけど本質を突いている気がしますね。
「手軽に食べられる」とかではなくて、結局は味だと思います。クセになって、やみつきになる要素といったら、カレーならスパイスですが、それ以上にニンニクの影響も大きいと思います。

餃子も、私はニンニクが入っていない餃子は好きではないですが、ニンニクが入るとやみつきになります。

印度カリー子
カリー子
入山章栄
入山
『美味しんぼ』で、山岡士郎が「餃子にニンニクを常に入れる必要はない」と言っていましたよね(笑)。餃子界ではどうですか?
餃子は中国から来た料理ですが、中国では基本的にニンニクは入れません。タレの方にスライスしたニンニクを置いて、好みでかじりながら食べるスタイルです。

日本ではおそらく、戦後の復興期に餃子が流行り始めた際、手に入る肉の臭みがかなり強かったため、その臭み消しとしてニンニクを入れたのが始まりだと思います。焼き餃子の方がたまたま流行っていって。

塚田亮一
塚田
入山章栄
入山
日本だとそうですよね。中国だったら蒸し餃子とか茹で餃子の方が人気ありますもんね。
中国では餃子は主食として食べられる事が多いですが、日本ではご飯やお酒、ラーメンのお供としての位置づけで、他の料理に寄り添う形で国民食になった印象があります。
塚田亮一
塚田
入山章栄
入山
カレーは主役だけど、餃子はどちらかというと脇役、二番手ですよね。だからこそニンニクや焼きという要素が効いているのかもしれません。水餃子は二番手にしたくないじゃないですか。
水餃子だと少し重い、という感覚もあったと思います。
塚田亮一
塚田
入山章栄
入山
そこにニンニクのちょっとした常習性が影響してるわけですね。
餃子はニンニクだけでなく、ニラも入ってますし、薬味なんだと思います。ラーメンもニンニクが入っていなかったら、長ネギやスープとかに使うはずですし、日本の和食は元々香りが強い食べ物ってNGだったと思うんですよ。

そこにカレーや餃子、ラーメンのような料理が入ってきて、日本人にとって「なんだ、この強い香りは」と感じつつも、和食では有り得ないようなきつい香りがやみつきになっていったのではないかと思います。

印度カリー子
カリー子
入山章栄
入山
確かに、ラーメンの鶏ガラや豚骨の香りも、それまでの和食にはあまり無かったものですよね。
常習性があるところで言うと、あとは油もあると思います。
塚田亮一
塚田
入山章栄
入山
香り、油、ニンニクが、実は国民食たらしめている共通項かもしれないと。面白い視点ですね。考えた事も無かったです。

「手作り感」をどう再現するか 食品ビジネスの難題

入山章栄
入山
カリー子さんにお伺いしたいのですが、日本中にカレービジネスはたくさんありますよね。ビジネスとしてカレーをどう見ていますか?
一時期、レトルトカレーがすごく多様化して、いろんな商品が出てきました。現状の課題として感じているのは、レトルトはどうしても香りが飛んでしまう事です。レトルト加工は120度で一定時間の殺菌が必要ですが、香りは揮発性なので高温になるほど飛んでしまいます。つまり、レトルトにした時点で香りが落ちてしまうんですね。

欧風カレーはそれでも成立しますが、スパイスカレーは香りが重要なので難しい。ではどうするかというと、やはり冷凍が一番おいしく保存できる方法になります。もちろん作りたてがベストですが、レトルトよりは圧倒的に冷凍の方が美味しいです。

冷凍カレーをもっと普及させたいのですが、現状は「カレー=レトルト」といったイメージが強くて、冷凍カレーがなかなか広がらないのが課題ですね。

印度カリー子
カリー子
入山章栄
入山
でも、味の素とかニチレイなどのメーカーは、当然考えていますよね。
考えていると思います。ただ、レトルトと同じ価格帯になった場合、やはり利便性ではレトルトが勝ってしまいます。餃子はレトルトが無いので、冷凍か生かの選択になりますが、カレーは「レトルトvs冷凍」になってしまう。

専門的に言えば冷凍の方がおいしいのですが、一般の消費者にとっては利便性の観点でレトルトが選ばれやすく、結果的においしいものが広まりにくい、といった構造があります。

印度カリー子
カリー子
入山章栄
入山
冷凍カレーって、レンチンでもいいんですか?
レンチンで大丈夫です。冷凍カレーもちゃんと認知されれば、もっとおいしいカレーが家庭で食べられると思います。冷凍の方がおいしいという認識がまだ広がっていないので、きちんと訴求する必要があります。
印度カリー子
カリー子
入山章栄
入山
これからのカレーの未来の一つは、冷凍カレー、冷凍スパイスカレーという事でしょうか?
冷凍カレーならかなり変わると思います。個食タイプの冷凍カレーは、確実にニーズがあると思っています。
印度カリー子
カリー子
たがえみ
たがえみ
私もスープカレーですけど、冷凍のスパイスカレーで、レンジで8分くらい温めるだけのものを食べています。スープカレーだから成立しているのかもしれませんが、また違うビジネスの可能性もありそうですね。
入山章栄
入山
家でレベルの高いスパイスカレーが食べられるなら需要はありそうですよね。
ただ、冷凍は流通コストが高くて、送料だけで1000円くらいかかってしまう事もあります。そこをどうバランスを取って普及させるかが難しいところです。
印度カリー子
カリー子
餃子も冷凍が主流ですが、実は冷凍にも2種類あります。味の素やイートアンドの商品は、一度加熱したものを冷凍しています。スチームしてから冷凍する事で日持ちするので、一般流通に乗せやすいです。

一方で、地方のお店がお取り寄せで出している餃子は、生餃子をそのまま瞬間冷凍する「生冷凍」です。こちらの方がおいしいのですが、30日くらいでひび割れしてしまい、あまり日持ちしません。同じ冷凍の中でも流通に乗せるとなると、その辺りの技術的な課題がありますね。

塚田亮一
塚田
生肉の流通はリスクが高いと思います。冷凍状態で発売していても、消費者が守ってくれないケースもあるので、生餃子もリスクが高いですよね。
印度カリー子
カリー子
だから大手やスーパーでは扱いにくいのだと思います。もう一つは、機械生産による画一化です。本来、餃子は食材の食感が重要ですが、機械で作る場合、餡をチューブに通して包あん機で成形するので、チューブに通るものしか餃子に包めません。
塚田亮一
塚田
入山章栄
入山
手作り餃子だと、やたら大きい具材が入っていたりしますよね。
そういう餃子がたくさん作れるようになれば、家庭でもより手作りに近いおいしい餃子が食べられるようになります。
塚田亮一
塚田
機械って本来、均一においしいものを作るためのものですが、今はランダム性をどう作るかという新しいフェーズに入ってますよね。
印度カリー子
カリー子
入山章栄
入山
餃子はランダム性が求められているわけですね。
ランダム性が無いと、結局いつもの餃子と同じものをひたすら食べ続ける形で、差に気づきにくいんですよね。
塚田亮一
塚田
入山章栄
入山
カレーはどうですか?欧風カレーにはランダム性を求めないとしても、スパイスカレーはふとした瞬間に香りが強く立ったりするようなランダム性の楽しさがありませんか?
そうですね。ただ、それは香りの変化の話であって、ルーの中身としては均一でもいいと思っています。製品化自体は比較的しやすいと思うので、どう香りを保存するかに注目すべきかですね。

レトルトで香りが飛んでしまうからといって、別添えのスパイスを付ける商品もありますが、あれは少し違って、結構難しい問題です。結局はどちらも出来立て、作り立て、手作りの状態をどう再現するかに尽きると思います。

印度カリー子
カリー子

なぜ地方は値上げできないのか 外食ビジネスのリアル

入山章栄
入山
これまでレトルトなど小売の話が中心でしたが、店舗ビジネスの方ではカレーや餃子で新しいやり方や課題などはありますか?
価格はかなり難しい問題だと思います。カレーに限らずですが、人件費も原材料費も上がっているのに、お客さんの感覚がそこに追いついていない。特に東京のように物価上昇に慣れている地域と、地方とで差が出てきています。

私は地方出身ですが、地方だと値上げすると直接クレームが来る環境もあって、地元のカレー屋も本当は厳しいのに値上げできないお店も多いです。カレーって手間も時間もかかるし、作り置きもしにくいのに、なかなか値上げできないのは大変だと思います。

印度カリー子
カリー子
入山章栄
入山
東京と地方では、かなり差が出てきていますよね。
東京のカレーはどんどん高くなっていますが、地方に行くと「あれ、まだ安いな」と思う時もあります。餃子は地方によって値段は違いますか?
印度カリー子
カリー子
やはり地方のほうが安いです。東京は若干高めに設定できている環境はありますが、それでも餃子は全体的に安い価格帯で提供されている事が多いです。
塚田亮一
塚田
東京だとランチで1800円くらいのカレーもありますけど、地方だと800円〜1000円くらいが多いですよね。
印度カリー子
カリー子
入山章栄
入山
1000円を超えると「高い」と感じられますよね。
「カレーで1000円?」という感覚になってしまうんですよね。
印度カリー子
カリー子
入山章栄
入山
餃子も地方では、300円〜400円くらいですか?
地方は地代や人件費が安いので、餃子しかない餃子の専門店も多いです。場合によってはライスすらありません。
塚田亮一
塚田
入山章栄
入山
そんな素敵な店があるんですか(笑)。
たとえば福島の円盤餃子の店だと、老舗の「元祖円盤餃子 満腹」は餃子とビールくらいで、サイドメニューはライスすら無いですね。
塚田亮一
塚田
入山章栄
入山
少し前の話で、餃子は焼き餃子でニンニクがあるから、基本的にサイドメニューのイメージじゃないですか。我々としては、どこか出口が欲しいですよね。
そういうお店は、立地が歓楽街の端などに多くて、飲みに行く前や締めで立ち寄る使われ方が多いです。
塚田亮一
塚田
入山章栄
入山
高知がそうですよね?高知って、みんなお酒をすごく飲むじゃないですか。最後は餃子で締めるんですよ。しかも餃子オンリーですよね。
軽くて、口に入れたら餡が消えてしまうぐらいの野菜餃子ですが、締めか飲みに行く前に小腹を満たすような感じの店が、宇都宮や大阪などの地方都市にはありますね。
塚田亮一
塚田
入山章栄
入山
餃子は締めの主食になり得るんですね。餃子って、ポジション取りが自由にいける”ポリバレントな選手”なんですね。