三宅 壮
- Sou Miyake -
株式会社コランダム・システム・バイオロジー ベンチャー投資部長
菊川 諒人
- Ryoto Kikukawa -
株式会社オースタンス CEO
入山 章栄
- Akie Iriyama -
浜松町Innovation Culture Cafe マスター
経営学者
田ケ原 恵美
- Emi Tagahara -
浜松町Innovation Culture Cafe 見習い店員
目次
株式会社コランダム・システム・バイオロジーの三宅壮さんと、株式会社オースタンスの菊川諒人さんを迎え、「ベンチャーキャピタル×シニア SNS」をテーマにディスカッション。バイオベンチャーが成功するための条件、シニア社会と研究者たちの未来について、経営学者・入山章栄さんが迫ります。

成功するバイオベンチャーとそうでない企業の違いは、どのような点にあるのでしょうか?
その中でも、私は特に「人」を重視しています。投資先とは5年、10年という長い期間にわたって関係を築く事になるため、どのような人物が経営しているのかを慎重に見ています。私は元々研究者だった事もあり、その企業が取り組むテーマにどれだけ魅力を感じられるかも重要な判断基準です。










































専門家全員が評価する案件は成功の可能性が高い一方で、すでに市場からも注目されており、企業価値が高くなっている事が多いからです。VCは投資時点の企業価値と、上場や買収時の企業価値との差によってリターンを得ています。





















菊川さんの事業も、コミュニティの参加者から直接収益を得るのではなく、そこから生まれるデータや知見を活用していますよね。価値を生み出す場所と収益を生み出す場所のズレを見抜き、活用する事が、投資家や起業家にとって重要なのかもしれません。
たとえば、ドラッグストアでは入口付近にお菓子が売られていて、実際には店の奥にある化粧品で儲けているように、その店舗が本当はどこで利益を生み出しているのかを考えるのが好きです。












































菊川さんとの違いがあるとすれば、私は自ら起業するよりも、起業家を支援する立場に適性を感じている点かもしれません。

















































「趣味人倶楽部」でも、特定のテーマに強い関心を持つ人たちが集まる事はあると思いますが、そのような偏りから外れるために意識している事や気をつけている事はありますか?
人との出会いは、果物の旬のようなものだと思っています。人と人が出会うべき旬なタイミングが常にあって、会う人とは会うし、会わない人とは会わない。
今の私の周りには、クライアントや社員やパートナーも含めて、好きな人しかいません。常に「この指止まれ」をしていて、その指に人が止まったり、お互いに止まり合ったりしながら、楽しく仕事をしている感覚です。





















既存の市場で誰かがやっている事を少しうまくやって利益を出しても、自分や従業員が少し良い暮らしをできるようになるだけではないか、と考えてしまうんです。これだけ豊かな日本で、本当にそれだけを目指す必要があるのだろうか、と。
だからこそ、本当に価値のある事をやりたい。顧客だけではなく、自分たち自身も豊かな気持ちになりながら、関わる人すべてと誠実に向き合う事を大切にしています。


実際、私たちの会社には元々、プロのバイオリニストだったメンバーもいます。私とは性格も正反対です。クリエイティブな人は考え方も視点も違いますし、そういう人がいるのはすごく大事だと思いますね。





















「無知の知」というカルチャーがあるくらいに、知らない世界の中で今日出会った人や今日知った事によって、自分の考えが大きく変わるかもしれない前提の中で生きているので、偶発的な出会いや多様性はとても大切だと思っています。





















こうした事業を続ける中で、今後どのような未来を実現したいと考えていますか?あるいは、どのような状態になればワクワクすると感じますか?
私はシニア事業を始めた時からその部分に着目していて、現役時代は手帳やカレンダーが予定で埋まっていて、「また月曜日か」「今週、土日これがある」みたいなのが減っていくんですよね。
「朝起きる理由が無い」と感じるのは、予定が減りすぎて「起きなくて死んでもいい」と冗談交じりに話しながらも、どこか寂しそうな表情を見せる人も結構います。





















しかし、孫の事や介護の問題、健康やお金の悩み、家族との関係、相続など関係性をしっかり見ていくと、さまざまな課題を抱えている事も見えてきました。楽しみを提供する事は大切ですが、土台となる課題が解決されていなければ、人生を楽しむ事に集中できません。
現在、弊社では趣味や健康といった領域に加えて、相続や資産管理などの課題を解決する金融面からのアプローチにも取り組んでいます。土台となる課題を解決しないと楽しみたいといった話にもならないので、その両輪を作る形です。























菊川さんの事業も含めて、日本で生まれた高齢化社会向けのサービスやスタートアップには、将来的に海外展開できる可能性があります。市場が存在するからこそ、新しい企業が生まれる。
そして今後、同じ課題に直面する世界各国に対して、日本で培われたソリューションやサービスを提供できるようになるかもしれません。そう考えると、とても大きな可能性を感じます。


だからこそ、日本でしっかりと成功事例を作って、海外へ展開していく事には大きな挑戦価値があると感じています。





















もう一つは、日本という市場をもっと成長させたいという思いがあります。私は日本人ですし、日本に戻ってきた理由の一つもそこにあります。日本の産業や研究をより大きく育てていきたいという気持ちは強く持っています。





















もちろん大学教授という仕事は社会的にも重要ですし、それなりの待遇を受けている方もいますが、優れた研究者はもっと経済的なリターンを得られてもいいのではないでしょうか。
私は研究者の道を離れた立場だからこそ、研究成果が社会に届き、研究者自身にも還元される環境を整える事に取り組みたいですね。





















「なぜ起業されたんですか」と尋ねたところ、「大学には研究資金がほとんど無いので、起業して資金調達を行い、その資金で研究を続けたい」と。ただ、大学教員が会社経営まで担うのは容易ではありません。そこで経営人材を外部から招き、自身は研究に専念する体制を考えていると聞いて、非常に良い形だと思いました。
日本では、東京大学や一部の有力大学に研究予算が集中しがちです。地方の国公立大学にも優秀な研究者は数多くいますが、資金面では大きな苦労を抱えています。そうした研究者や大学にも、もっと光が当たってほしいですね。
そうした研究者を発掘し、一緒に事業化を進めていく。研究者自身が経営を担わなくても、起業家や経営人材、資本を集めて事業を形にしていくのが私たちVCの役割です。
先ほど「翻訳」という話もありましたが、研究と社会を繋ぐ役割を果たしていきたいと思っています。





どの市場が今後成長していくのかを見極める事も、事業としては非常に重要ですが、最終的にはやり続けるしかないので、PMFは結果論だと思っています。





















私が以前在籍していたシンガポールのスタートアップでは、従業員数が数カ月で100人規模から数千人規模へ拡大しました。私が退職する頃には数万人規模となり、シンガポールで2番目に大きなテック企業へ成長していました。





















ユーザーが急激に増えると、採用も追いつきません。どれだけ人を採用しても需要に対応できず、採用の質を維持する事も難しくなっていきます。そうした経験を通じて、PMFにはさまざまな形があると実感しました。
だからこそ、PMFという言葉をあまり軽々しく使えないですし、結局のところ結果論じゃないかと思って、PMFをあまり意識していません。

