大学卒業後、株式会社電通に入社。営業局を経てクリエイティブ局へ。その後は、コピーライターとして、様々な商品・企業・団体のブランディングに従事され、手掛けたプロジェクトの数は100以上。世界三大広告賞のうちCannes LionsとThe One Showのダブル入賞をはじめ、ACC賞、TCC新人賞など、国内外で20以上のアワードを獲得。広告以外にも、大学でのコピーライティングやアイデア発想のゼミも開講するなど多方面で活躍される一方で、著書も多数。今年3月には、祥伝社から「聞き出せる人が、うまくいく」を発売。
大学と大学院を経て、AIスタートアップ企業に就職。採用・人材育成・組織文化づくりを統括する傍ら、「ぬいぐるみコミュニケーションデザイナー」として活動。大人とぬいぐるみの関係性に着目し、ぬいぐるみを起点とした対話や自己理解、コミュニティ形成の研究・実践を行っています。主宰する「ぬいぐるみの保育園」は予約困難な企画として話題を呼び、テレビ・新聞・Webメディアなど多数のメディアで紹介。企業・教育機関でのワークショップや講演活動も展開し、ぬいぐるみを通じた新たなコミュニケーションの可能性を探究。
慶應義塾大学経済学部卒業、三菱総合研究所で主に自動車メーカーや国内外政府機関へのコンサルティング業務に従事した後、2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院よりPh.D.を取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授。
2019年より早稲田大学ビジネススクール教授。
テレビ東京『ワールドビジネスサテライト』のコメンテーターを務めるなど、TV出演も多数。
1994年生まれ、滋賀県出身。大学在学中、学内で開催されたミスコンテストで準グランプリを受賞。
SNSのマーケティングスキルを活かしタレント・インフルエンサーとして活動を開始。卒業後はITベンチャーで広報部の立ち上げを担当。自社PRだけでなく、業界啓蒙やファンベースを生かした広報活動を経験。松竹芸能所属。
株式会社電通でコピーライターの荒木俊哉さんと、ぬいぐるみ研究者で株式会社Fluffy Communication代表の金子花菜さんを迎え、「広告×ぬいぐるみ」をテーマにディスカッション。金子さんが主宰する「ぬいぐるみの保育園」の取り組みや、荒木さんが実践する相手の本音を引き出す質問術、インプットとアウトプットの関係性について、経営学者・入山章栄さんが迫ります。
入園式、身体測定、お昼寝まで完全再現「ぬいぐるみの保育園」
人間の保育園と全く同じです。朝9時に保護者の皆さんがぬいぐるみを連れて会場まで来てくださったら、その日1日、園長先生として私がお預かりします。入園式をしたり、身体測定をしたり、ランチを食べたり、その日に合わせた遊びをしたりしています。
金子
カレーを食べている子は、保護者の方に「何が好きですか?」と聞いたら、「うちの子はカレーが好きです」と教えてくださったので、カレーを食べている写真を撮ってお送りしています。
金子
保護者の方から事前に「黄色が大好きで、黄色に目がない」と聞いていたので、レモンのかき氷を食べている写真を撮りました。
保育園なので、お昼寝もします。でも、ぬいぐるみは目を閉じられないので、手作りのアイマスクを付けて寝ている様子を撮影しています。
金子
想像を絶するほど喜んでくださいます。
金子
3年前に始めた頃は、これ一本でやっていこうと思っていました。でも体力がかなり必要で、これだけで続けるのは難しいと判断しました。今は年に10回ほど、イベントとして開催しています。
金子
ぬいぐるみが好きな方のインサイトを知りたいと思いました。どんなところに魅力を感じて、どんな気持ちで保育園に預けようと思うのか、何か面白いエピソードはありますか?
荒木
保育園にはそれなりの料金をいただくので、皆さん費用対効果も考えます。その中で「この子なら預けたい」と思える子が必ずいるんです。その子は、たいていベッドの横やソファの横にいる、一番身近な存在です。
金子
最初に始めた頃は、ナンバー2の子しか来ませんでした。皆さん3体くらい連れてきて、SNSでいつも見ている子ではなくて「え、その子じゃないの?」という事がよくありました。
金子
「ナンバーワンに預けてもらうためにはどうしたらいいか」と聞き出したり、「床に落ちるかもしれないから、きれいな会場がいい」「保育園の先生が信頼できる人か分からない」「実際に会って人柄を見ないと預けられない」といったフィードバックをいただいたりしました。
金子
ずっとナンバー2を預けていた方が、初めてナンバーワンを預けてくれた時は、どんな気持ちでしたか?
荒木
本当に感動しました。事前にGoogleフォームで保護者の方へインタビューをお願いしていて、30問くらい質問があります。「どこで出会いましたか」「お肌の状態はどうですか」など、ぬいぐるみについて詳しく教えていただきます。
その中で、一番最初に預ける子の名前を書いてもらう時に、InstagramやXでいつも見ていた、あの子の名前を見つけた瞬間、「やっと来てくれた」と思いました。「認められた。私を認めてくれた」と感じますね。
金子
相手の本音はどう引き出す? コピーライター・荒木俊哉が教える”言葉の深掘り術”
聞きたくなりますね。相手が最初に話す言葉って、その人が考えている事のほんの一部しか表現できていないと思っているんです。仕事でも同じで、クライアントから「こういう広告を作りたい」「もっと目立つものにしたい」といった、少しぼんやりした要望をいただく事がよくあります。
「あなたにとって目立つとは何ですか」「どんな時に、いい広告だと思いますか」といった具合に聞く事で、「なるほど、こういう事を作りたいんですね」と初めて見えてきます。
荒木
ありますね。マーケティング部や宣伝部など、いろいろな部署の方と仕事をしますが、肩書きで仕事をされていると理解しつつも、一人の人間として、その商品にどんな思いを持っているのか、ブランドをどう育てたいのか。結局、人が作るものなので、その人のパーソナリティがすごく反映されます。
荒木
私もコピーライターになって最初の5年くらいは全然書けなくて、ゼロから生み出そうとしていたんです。
荒木
ずっと考えて、打ち合わせへ行っても全部ボツ。その繰り返しでした。ある時、先輩と一緒にクライアントへ伺って、自動車メーカーの技術者の方から「次の車はこういうコンセプトです」と話を聞いていたんですが、正直あまりいい言葉が出てこなくて、どうしようかなと思っていました。
すると先輩が突然、「ちなみに、このリーダーの方って口癖はありますか」と、全然違う角度からの質問を投げてくれて、その場が一気に盛り上がりました。「うちのリーダーは、いつも”この車がカッコ悪くなったら、このプロジェクトは辞める”って言うんですよ」と教えてくださったんです。
車の性能とは全く関係ない言葉ですが、その一言に、この車へ懸ける想いが一番表れていると感じて、その場で「これだ」と思いました。意外と、本人の生の言葉の中に原石が隠れている事が多い気がします。
荒木
ぬいぐるみにも「この子に口癖はありますか」と聞きますし、「直してほしい所はありますか」「寝る時の寝相はどうですか」といった事も聞いています。
何を質問すればいいかは、自分の中で何度も考えて、分析して組み立てています。でも、普段からコミュニケーションを重ねていないと、そういう質問はとっさに出てこないと思います。そういう意味でも、プロの方のお話はすごく参考になります。
金子
もちろん慣れや経験もありますが、誰でも使いやすい方法が言葉の意味を深掘りする事です。たとえば「もっとプレミアムな広告にしたい」と言われたら、「プレミアムってどんな印象ありますか」と、相手が使った言葉をさらに掘り下げるだけなので、誰でも実践しやすいと思いますし、私もよく使っています。
荒木
まさにそうです。これまで言語化をテーマにした本を何冊か書いてきましたが、一般的に言語化とは、自分の頭の中を言葉にする事を指します。
でも、それは他人の頭の中でも同じなんじゃないかと思って、今回の本(祥伝社『聞き出せる人が、うまくいく』)では、「他人の頭の中を言語化する」を裏テーマにしています。
荒木
質問リストより大切なこととは? 相手の自己開示を促す会話のテクニック
最近のスタートアップの営業は、そういうパターンが多いですね。インサイドセールスの方などは、相手を深掘りしたり共感したりせず、シナリオ通りに進めていきます。
金子
私は事前に細かい質問リストを作る事はあまりしない代わりに、自分なりのルールがあります。まず出来事を聞いて、その後で「その時どう感じましたか」と聞く。この順番を大切にしています。
人は「あなた、どう思いますか」と感情や意見をいきなり聞かれても、答えるのがすごく難しいんです。だから最初に「何があったんですか」と出来事を話してもらって、「その時どう感じましたか」と追いかけるように聞くと、本音がポロッと出てくる事が多いですね。
荒木
私もぬいぐるみ好きの方へインタビューする時、一番最初に聞くのは「ぬいぐるみさんと出会った日の事を教えてください」という質問にしています。皆さんすごく熱く語ってくださいますし、その子との歴史を振り返るきっかけにもなります。
最初は「うちの子はね」と説明口調だった人が、途中からぬいぐるみ本人になりきって話し始めるんですよ。そうなると、本音しか出てきませんし、私はそこに乗って、「そうなの?もっと教えて。ママにも秘密はあるの?」と聞くと、「本当は言っちゃいけないんだけどね」と一人で演技しているから、周りから見たら少し不思議な光景かもしれませんが、一気に自己開示が進むんですよね。
金子
その日まではSNS上で知っている人、申込者と運営者でしかない関係が、保育園へ送りに来てくださった最初の5分で自己開示をする事で、全部さらけ出したような感覚になるんです。
一気に距離が縮まって、「夕方まで、この子は私が絶対守るからね!」「ママ、ちゃんと迎えに来てね!」といったやりとりが繰り広げられます。
金子
「ママ、僕、17時に待ってるよ!」と話しかけると、保護者の方が泣きながら「うちの子が……」と言ってくださる事もあります。
金子
ぬいぐるみの活動を始めてから、困った事がほとんどないのが集客です。普通、新しい事を始める時は人を集めるのが一番大変ですよね。でも、最初から満員になったり、キャンセル待ちが出たりするほど、多くの方に選んでいただけました。
金子
アウトプットが変われば、インプットも変わる
アウトプットで言えば、私は言語化についての本を書いています。それ自体がアウトプットで、自分の考えを深掘りしようとすると、必ず何かしらのインプットがあって、それに対して自分がどう感じたかをアウトプットする。その一連の流れだと思っています。
だから、「言語化がうまくできない」と悩んでいる人は、まずインプットを変えたほうがいいんじゃないかと思うんです。そうすれば、自然とアウトプットも変わってきます。
もう一つは、多くの仕事は2人以上で進めます。自分がアウトプットしたものが相手のインプットになり、相手のアウトプットが今度は自分のインプットになる。お互いの間で循環していく状態が、一番いい形なんじゃないかと思います。
荒木
私は、アウトプットのゴール設定をかなり具体的にしています。多くの方は「何かを作る」「何かを発表する」といった行動だけをゴールにしがちですが、私はその先の「参加した人に、どんな感想を持ってもらいたいか」「どんな気持ちで終えてもらいたいか」まで具体的に設定して、そのための準備を進めます。
インプットの段階でもかなり緻密に情報を集めて、ブレストのような自由な発想は、もっと前の段階で始めています。
金子
仕事でも同じで、たとえばイベントをやる時は「終わった後、参加者の社長はどんな感想を持っているべきか」「私たちチームはどんな気持ちで終わりたいか」と、関わる全員のゴールを言語化します。その状態を目指して、準備を整えていきます。
金子
たぶん、厳しい母に育てられた影響ですね。小さい頃からピアノの発表会は完璧でなければいけない。いろいろなお稽古をして、コンクールにも出ていましたし、賞を取らなければいけない、学級委員にならなければいけない、応援団長もしなければいけない、そんな家庭で育ったので、自然とこういう性格になりました。
幼い頃から、「どうすれば母に怒られないか」を逆算して考えていたんだと思います。
金子
本を読むのは好きでしたね。それが僕にとってのインプットだったのかもしれません。でも、自分で「本を読むのが好きなんだ」と気付いたのは、実は25歳くらいなんです。
荒木
家族で話していた時、4歳下の妹が「お兄ちゃん、学校へ行くバスの中でずっと本を読んでたよね。私には無理だった」と言われて、私にとっては当たり前だったので、人から「よくそんな事できるね」と言われる事って、皆さんにもあると思うんです。実は、そこに大きなヒントがあるんじゃないかと思っています。
自分が好きな事や夢中になれる事がまだ見つかっていない人は、「よくそんな事やるね」と言われるエピソードが、実は本当に好きな事や夢中になれる事なんじゃないかと、お話を聞きながら改めて感じました。
荒木
現地へ行き、人に会う 本当に伝えるべき価値の見つけ方
まず、頭の中で徹底的にシミュレーションします。「もしも」の時間がものすごく長くて、妄想しすぎだと思われるくらい考えています。何かに憑依されたみたいに、一日中考えていますね。
ドライヤーをかけながら、「次の保育園のテーマはひな祭りにしよう」と考えたり、このお客さんが来たらどうコミュニケーションを取ろうかとシミュレーションしたりしています。男性が一人で来た時に、どう声を掛けたら恥ずかしい思いをさせずに済むかの練習も、鏡を見ながらメイクをしている時によくやっています。
金子
意識しなくても自然にできるようになっていますね。もう自分の中に刷り込まれているんです。ぬいぐるみ好きの方へ何十人もインタビューすると、「自分の大切な存在を大切に扱ってくれる人にしか預けたくない」とおっしゃるので、「大切にしてくれる人」だと思ってもらうにはどうすればいいかを考えます。
ぬいぐるみを持ってきてくださった方には、まず「触ってもいいですか」「私が触っても大丈夫ですか」「何ちゃんとお呼びすればいいですか」と聞いて、「○○ちゃん、はじめまして」とあいさつしてからお預かりします。
普通の方は、そういう所作ってなかなかされないと思うので、私は全部シミュレーションから始めています。
金子
インプットとアクションがかなりつながっています。たとえば、ある温泉地のPRを相談された時の話なんですが、担当者から「美人の湯として打ち出したい」と言われたんです。「なるほど」と思った一方で、「美人の湯」はよく聞く表現なので、差別化できるのかなという感覚もありました。
実際に現地へ行き、働いている方々に話を聞いてみると、皆さん仕事が終わって夕方5時になると、必ず温泉に入ってから家に帰ると言うんです。「そんな文化があるんですね」と話を聞いていくうちに、その近くが昔から禊(みそぎ)の文化発祥の地として知られている場所だと分かりました。
そうやって現地でインプットを重ねていくと、最初に聞いていた「美人の湯」よりも、もっと魅力的な切り口が見えてきたんです。歴史を自分で調べる事もありますが、やっぱり現地へ行って、人に話を聞く中で見つける事が多いですね。
荒木
インプットとアクションがほぼ同じ感覚なのかもしれません。
荒木
私も現地へ行く事は結構あります。ぬいぐるみサイズの遊具や小物は全部、広告業界のアートディレクターの方に、副業としてお願いして作っていただいているんです。そのイメージを伝えるために、本物のブランコを見に行ったり、人間用の顔はめパネルを見に行ったりします。
リアルなものをぬいぐるみサイズへ落とし込む事にすごくこだわっているので、まずリアルを見て、ぬいぐるみ向けにどうカスタマイズするかを考えています。
金子
そうかもしれません。人や社会へ広く伝えて、多くの人に関わってもらう仕事なので、ファンへ届ける仕事とは広げ方が違うのかもしれません。
荒木
そうですね。対象はかなり広い事が多いです。
荒木
多くの人を巻き込もうとすると、「このコンセプトなら、この人には響く。でも別の地域の人には伝わらないかもしれない」といった視点も必要になってきます。
荒木