2026.07.28

異世界対談

【前編】サポート 〜寄り添い伸長させる〜

【前編】サポート 〜寄り添い伸長させる〜

松下 享平

松下 享平

- Kohei Matsushita -

株式会社ソラコム テクノロジー・エバンジェリスト

1978年生、静岡在住、新幹線移動族。2017年よりソラコムのテクノロジー・エバンジェリストとしてIoTとSORACOMサービスの活用事例・デモを通じて、IoTを世の中に広める講演や執筆を行っており、登壇回数は延べ800以上。座右の銘は「論よりコード」。
松浦 シゲキ

松浦 シゲキ

- Shigeki Matsuura -

メディアコンサルタント・コミュニケーションプランナー

2004年ライブドアに参画。BLOGOSのプロデュース等を経て、WIRED.jpのデジタル担当、GREEのニュース統括担当などを歴任。さらにハフポスト日本版の創刊編集長に就任し、立ち上げからおよそ1年半で月間1300万ユニークユーザーまで成長。その後スマートニュース、MOLTSを経て2023年9月より独立。「みんなでしあわせになろうよ(Lets all become happy together.)」をビジョンに、「お互いに多様性を認め合うことで全ての人がなめらかなコミュニケーションができるようにする」というミッションを元に活動中。
入山 章栄

入山 章栄

- Akie Iriyama -

浜松町Innovation Culture Cafe マスター
経営学者

慶應義塾大学経済学部卒業、三菱総合研究所で主に自動車メーカーや国内外政府機関へのコンサルティング業務に従事した後、2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院よりPh.D.を取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授。
2019年より早稲田大学ビジネススクール教授。
テレビ東京『ワールドビジネスサテライト』のコメンテーターを務めるなど、TV出演も多数。
田ケ原 恵美

田ケ原 恵美

- Emi Tagahara -

浜松町Innovation Culture Cafe 見習い店員

1994年生まれ、滋賀県出身。大学在学中、学内で開催されたミスコンテストで準グランプリを受賞。
SNSのマーケティングスキルを活かしタレント・インフルエンサーとして活動を開始。卒業後はITベンチャーで広報部の立ち上げを担当。自社PRだけでなく、業界啓蒙やファンベースを生かした広報活動を経験。松竹芸能所属。

株式会社ソラコムでテクノロジー・エバンジェリストの松下享平さんと、メディアコンサルタント・コミュニケーションプランナーの松浦シゲキさんを迎え、「サポート」をテーマにディスカッション。顧客の本音を引き出す課題発見の手法やデータを活用した改善プロセス、さらに「外圧」を味方につけて組織を動かすアプローチについて、経営学者・入山章栄さんが迫ります。

「本当に解決したい事は何か」 顧客の本音を引き出す課題解決術

入山章栄
入山
松下さんにお伺いしたいんですが、ソラコムはモノのインターネットでさまざまな会社のモノをつなぐサービスですよね。いろいろな企業の課題に直面すると思いますが、そうした課題はどうやって見つけているのでしょうか? お客様から持ち込まれるのか、それともソラコム側から見つけに行くのでしょうか?
お客様から持ち込んでいただくケースが非常に多いですね。お客様の課題は本当に一社一社違います。「工場をつなげたい」という話もあれば、「見守りをやりたい」という相談もあって、全く異なる内容が私たちのもとへ寄せられるんです。

課題を把握する上では、まずしっかりお話を聞く事が大前提ですが、お客様がおっしゃる内容だけではなく、その裏側まで見ていかなければいけないと思っています。

松下享平
松下
入山章栄
入山
裏側とは、どういう事でしょうか?
たとえば、「工場の生産ラインをつなげたい」という相談を受けたとします。表面的にはその要望を受け止めますが、本当に実現したいのは何なのかを掘り下げると、「一個でも多く製品を作りたい」という願いがある場合も多いです。

その願いをどう形にするかを壁打ちしながら、お客様自身に本当の目的へ気付いていただく。そうした取り組みをうちのメンバーはよくやっています。

松下享平
松下
入山章栄
入山
つなげる事はあくまで手段ですからね。
おっしゃる通りです。極端な話、「それならIoTではなく、別の解決方法がありますよね」となるケースもあります。
松下享平
松下
入山章栄
入山
その場合は「ソラコムじゃない方がいいですね」と伝えるんですか?
実は私たちの組織には、「ソリューションアーキテクト」と呼ばれる職種があります。日本語では技術営業に近い仕事です。彼らは売り上げでは評価されません。お客様の課題を解決できたかどうかで評価される職種なんです。
松下享平
松下
入山章栄
入山
無理にソラコムへ誘導せず、お客様の課題が解決できればOKなわけですね。
その代わり、セールスは泣くという……(笑)。
松下享平
松下
やっぱり売る事を目的にしてしまうと、「どうしても…」ということはありますよね。
松浦シゲキ
松浦
「どうしても、これを何とかねじ込みたい」と考えてしまいますし、月末になると「数字が……」と言いたくなる。でも、もう片方では「この仕組みに変えれば、もっと使用料を安くできますよ」と提案する人もいるんです。

それが結果的にはお客様の信頼につながって、「次の相談もお願いします」と言っていただける。そうした信頼の積み重ねが礎になる事もありますね。

松下享平
松下
入山章栄
入山
松浦さん、この点はいかがでしょうか? コンサルタントも、次の案件につなげるなら気持ちいい話をした方が良い場面はあると思います。でも、お客様の事を考えると、そうではないケースも多いですよね。ジレンマもあるのではないでしょうか?
大きな課題を解決した方が話は早いですし、お客様にも受け入れられやすい面があります。でも、その課題を片付けた後、「次は何がありますか」「それは本当に根本的な課題ですか」と考えると、実は短期的な課題を解決しただけで、中長期の課題には全く手が付いていない場合もあります。

そういう時は、「その大きな課題は、やろうと思えばできますから、一旦置いておきましょう。それより中長期で改善すべき部分に取り組みましょう」とお伝えします。中長期で成長するためには、そうした話もしなければいけません。

松浦シゲキ
松浦
お客様へそうした話をすると、結構辛口に聞こえる時もあると思うんですが、そういう時はどうされているんですか?
松下享平
松下
他のコンサルタントの話でも話題になりますが、そういう時こそ、コンサル業は「笑顔」が大事なんだと思います。
松浦シゲキ
松浦
本当に分かります。渋い顔で厳しい話をするより、「大丈夫ですよ!」と笑顔で言いながら、実は結構厳しい話をしているんですよね。
松下享平
松下
偉い人が偉そうに話すと、周りは萎縮してしまいますし、あまり良くありません。「偉そうな先生が来た」と思われると、現場の雰囲気まで重くなってしまいますし、「やらなければいけない」という強迫観念にもなってしまいます。

だから、ある程度柔らかい雰囲気で入って、「状況はあまり良くないかもしれませんが、こういう形で改善していきましょう」と話すんです。ただ、今はAIで議事録を作れますよね。あとで文字起こしを見ると、「結構辛辣な事を言っているな」と自分でも思います(笑)。

松浦シゲキ
松浦
入山章栄
入山
文章にすると、よくありますよね(笑)。お客様へ寄り添うためには、まずは笑顔が大切だと。
笑顔です。
松浦シゲキ
松浦
すごく分かります。お客様は現時点で困っているからこそ、「サポートしてください」「支援してください」と相談に来られるわけです。その状態で、こちらまで険しい表情で「できていませんね」と言ったら、「そんな事は分かっているよ」となってしまいますから。
松下享平
松下

データが共通言語になる 課題発見のプロが最初に見るもの

入山章栄
入山
松浦さんの場合は、お客様から相談を受けるだけではなく、ご自身でメディアの課題を見つける場面も多いと思います。その辺りの課題発見のコツや、壁打ちを通じて引き出す方法など、普段どんな形で取り組まれていますか?
私の場合は、ユーザーインタビューみたいな形で「実際にどう使われていますか」とお聞きするんですが、どうしても話が大きくなりがちですし、誰に聞いても同じような内容が出てくる事が多いです。

それよりも、インターネットのデータだけではなく、テレビをはじめとしたマスメディアのデータも含めて確認しますね。

数字は正直ですから、まず記事がどう読まれているかなど、数字の部分を先に見るようにしています。テキストやメール、ドキュメント、レポートなどで「こういう課題があります」と送られてくるんですよ。読めば分かりますし、ヒアリングをしても同じ話が返ってくる事が多いので、それなら秘密保持契約(NDA)を結んだ上で「社内データを見せてください」とお願いしています。

松浦シゲキ
松浦
入山章栄
入山
まずはデータなんですね。
私は20代の頃、エンジニアだったんです。サーバーサイドやデータを見る仕事をしていたので、数字から物事を見るのが好きなんですよ。
松浦シゲキ
松浦
入山章栄
入山
本質ですよね。数字は一番冷徹に現実を見せてくれますからね。
定性的な話ももちろん大事ですが、ビジネスって結局、最後は数字が伸びるかどうかが結果なので、「まず数字を見せてください」という話になりますね。
松浦シゲキ
松浦
本当にそうですね。最終的にはデータへ行き着くんだと実感しています。先ほど話した「困っている」という声に対して、「つなげましょう」と提案するんですが、その困り事をどう数字へ変換するかが重要なんです。

我々はソリューションアーキテクトが担当していますが、お話を伺っていると、コンサルタントの仕事にすごく近いなと感じますね。

松下享平
松下
入山章栄
入山
具体的に話せる範囲で構いませんが、『浜カフェ』を聴いている皆さんにも分かりやすい事例があれば教えていただけますか?
私たちは工場の現場に関わるケースが多いんですが、従来は生産ラインが止まると、事実上モノが作れなくなります。だから工場としては、一秒たりとも止めたくありません。

でも、清掃や製品切り替えで部品を交換する時は、どうしても止めなければいけない。その停止理由を、以前は手書きで記録していたそうなんです。

「これから清掃します」といった内容を書くのですが、その情報自体が正確ではないケースも少なくありませんでした。

松下享平
松下
入山章栄
入山
手書きだから、ミスもありますよね。
止まっている理由を集めても、「本当にそれが原因だったのかな」と分からないケースが結構ありました。その結果、現場と管理者との間で認識のズレが生まれてしまう場面も多かったんです。
松下享平
松下
入山章栄
入山
ソラコムのIoTで可視化すると、客観的な数字で全部分かるから、そうなると現場も管理側も同じ数字を見られるわけですね。
データが共通言語になるんです。私たちがお客様から教えていただいた、大切な考え方ですね。
松下享平
松下
コンテンツの世界では、「動画が悪い」「音声が悪い」「テキストが悪い」といった話になりがちです。その前提となる物語や文脈はそれぞれ全く違います。

ただ、そこへ至るまでの数字は誰に対しても平等なので、まず数字から見なければいけないと思っています。

私はメディアコンサルティングの現場に入って3年ほどになりますが、コンテンツそのものを直した事はほとんどありません。

松浦シゲキ
松浦
たがえみ
たがえみ
企画自体は良いケースが多いんですね。
その前の段階で、コンテンツをタイトルやサムネイルも含めて、情報がきちんと伝わる形に設計できているのか。どれだけ良いコンテンツを作っても、読まれなかったり見られなかったりすれば、結局は届きませんからね。
松浦シゲキ
松浦
入山章栄
入山
これもメディアあるあるですよね。出版社でも、「中身は素晴らしいのに、なぜ売れないんだ」という本はたくさんありますが、原因の多くはタイトルや表紙、あるいは販路や流通経路だったりします。そこを改善しない限り、どれだけ良いモノを作っても届きません。

だから、まずは流通や届け方を見直す必要があります。コンテンツの良し悪しだけで売れるわけではないんですが、みんな新しいコンテンツを作りたがるんですよね。

IoTはモノを作らなければいけませんが、テキストやデジタルコンテンツは簡単に作れて、簡単に書き換えられます。だからこそ、新しいコンテンツを増やすよりも、流通経路や届け方に力を入れた方がいいと思っています。

仮説は経験から生まれる データだけでは見えない課題解決の本質

入山章栄
入山
ソラコムも結局は企業をサポートする仕事ですが、悩みや興味をサポートしてるだけなんですね。
その話で言うと「自分たちはどっちなんだろう」と考えていました。
松下享平
松下
入山章栄
入山
ソラコムは悩みの方が多そうですね。
お寄せいただく相談は、悩みに関するものがほとんどですね。私の仕事では、登壇や執筆を通じて情報発信もしています。

ただ、興味を持ってもらうというよりは、悩みを掘り起こすイメージに近いですね。

松下享平
松下
入山章栄
入山
松浦さんはどうですか。プロのメディアコンサルタントとしては、悩みを掘り起こすだけではなく、興味を持ってもらう方向へ展開する事もあるのでしょうか?
展示会などで話す時は、会場へ来ている方は自分の意思で足を運んでいますよね。つまり能動的だから、基本的には悩みの解決です。はっきりした課題を持って来場する人もいれば、「何か解決策はないかな」と思って来場する人もいます。

温度差はありますが、根本は悩みを解決したい気持ちだと思っているので、展示会で講演する時は、必ず悩みの解決を軸に話します。

一方で、会場を歩いている人は受動的に情報へ触れています。そうした方に興味を持ってもらえる展示は必要ですが、話す内容は悩みの解決にフォーカスする。その差はつけましょうみたいな話はしますね。

松浦シゲキ
松浦
たがえみ
たがえみ
課題を発見する際、お二人ともデータと生の声の両方を参考にするとおっしゃっていましたよね。ただ、データは使った後に蓄積されるものですし、その前には仮説も必要だと思います。その仮説は、普段どのように立てているのでしょうか?
データには必ず、どんなテキストだったのか、どんな状況だったのかといった定性的な情報も付いています。その情報を読み解き、仮説へ変えていくところこそ経験が生きる部分だと思っています。

これまでどんなコンテンツを見てきたか、どんな事例を経験してきたか。その蓄積があるから仮説を立てられるんです。だから私の場合、仮説は定性的な情報から組み立てています。

松浦シゲキ
松浦
IoTの相談では、お客様の手元にデータがないケースがほとんどです。だから、「まずデータを集められる環境を一緒に作りましょう」と寄り添うところから始まります。

ただ、ゴールも決めずにデータだけ集めても、正直ゴミしか集まりませんので、私たちがこれまで他のお客様から学んだノウハウや「こういうデータを取ると役立ちますよ」といった話を紹介します。

一度で欲しいデータが全部揃う事はないので、「ここを改善しましょう」「このデータもあった方がいいですね」と改善を繰り返しながら、サイクルを回していく形になります。逆に言うと、データが集まるまでの時間は周りから見ると意味のない時間なんです。

だから、その時間をいかに短縮するかが私たちの役割で、「こんな技術がありますよ」「こんな仕組みなら今日からでも始められますよ」と紹介して、できるだけ早くデータを取得できるよう支援しています。

松下享平
松下
私の領域では、新しくネットメディアを立ち上げる場合なら、「まず3カ月はいろいろなコンテンツを出して、データを貯めましょう」とお話しします。

その3カ月は、上司にいろいろ言われるかもしれませんけど、そこは気にしなくていい。当たりもあれば外れもあります。外れたデータも立派なデータなんです。

松浦シゲキ
松浦
入山章栄
入山
松浦さんのところはメディアだから、データを蓄積するために3カ月が必要で、松下さんはIoTを使って、いかに短時間でデータを集めるかが重要なんですね。
以前なら、多額の投資をして「データが取れるのは半年後です」という話が、今はIoTの安価な技術を組み合わせれば、今日導入して明日にはデータが見られるケースもあるので、「じゃあ、やってみようかな」と思っていただけるきっかけを作る事も私たちの役割ですね。
松下享平
松下
入山章栄
入山
今回のお話で「データは共通言語」というのは、本当にそうですよね。
データは結構残酷なので、AIはそれができてしまうんですよね。だから、人間がやるべき事は「一緒に頑張りましょう」と寄り添う事なんです。極端な話、1位から50位まで全部数字で出てしまいますから。
松浦シゲキ
松浦
入山章栄
入山
だから笑顔なんですね。
笑顔です。絶対に詰めない事が大切です。
松浦シゲキ
松浦

改善を成功へ導く最初の一歩とは?

入山章栄
入山
「改善策を考える」をサブテーマにお話ししたいと思います。寄り添いながらデータを集め、課題を見つけました。問題はそこからですよね。そこからどう改善していくのか。

松浦さんはメディアのプロとして、お客様の改善を支援する時に一番大事にしている事は何ですか?

一番大事にしているのは、小さな成功を積み重ねる事です。大きな成功は狙いません。小さな成功と継続性ですね。

小さな改善を積み重ねていく方が、最終的には右肩上がりの成長につながるので、その状態を目指しています。

松浦シゲキ
松浦
入山章栄
入山
イチローやダルビッシュが言いそうですね(笑)。
メディアには、「悩みを解決する」「興味・関心に入る」の2つの役割があると思っています。悩みは解決したら終わりですよね。そうなると、このメディアにはどんな存在価値があるのかという話になるので、継続的に悩みを少しずつ改善できる仕組みは何か、あるいは興味・関心を持ち続けてもらうには何が必要かを考えています。

メディアは、自分たちで出来事を生み出しているわけではなく、世の中で起きた出来事を追いかけながら、多くの人に見てもらう仕事です。たとえば、野球でスター選手が現れたとします。みんなが注目するので、その話題にリソースを集中したくなる。でも、その選手がケガをしてしまったらどうするのか。

だから、一つの話題に全てを賭けるやり方は避けましょう、とお伝えしています。

松浦シゲキ
松浦
入山章栄
入山
なるほど、面白いですね。そういう場面では、問題設定自体を大きくしようと考えがちですが、問題設定はそのままにして、目の前の課題を小刻みに解決していくイメージなんですね。
多くのお客様はマイナスからスタートしています。小さくても成功体験を積まないと、気持ちも前向きになりません。

一つずつ課題をクリアして、「プラス1」になった実感を持つ事が大切なんです。

レベルアップの音が鳴るのは、3カ月後よりも明日の方がいいじゃないですか。派手なファンファーレが一度鳴るより、小さなチャイムが毎日鳴る方が気持ちいいんですよ。

松浦シゲキ
松浦
入山章栄
入山
まるで『ドラゴンクエスト』みたいですね。
もちろん、メタルスライムやはぐれメタルを倒せば、一気にレベルは上がります。でも、なかなか出会えませんし、ストレスも溜まります。

それより、目の前のスライムを一匹ずつ倒して、少しずつレベルを上げていく方が現実的です。

松浦シゲキ
松浦
入山章栄
入山
地道にレベルを上げていくといいわけですね。
「小さな成功」という考え方は、本当に共通しています。私は、この手の話を言う時のプレゼンテーションの中で、わざと2つのシチュエーションを用意していて、「IoTに取り組みたいのは分かりました。では、最初に挑戦する課題はAとB、どちらを選びますか」と質問します。

Aは全国100拠点あって、それぞれ年1回点検します。つまり年間100回の点検です。一方、Bは拠点が1カ所しかありませんが、1日に3回必ず点検します。「どちらの方が早く成功できますか」と聞くと、多くの方がBを選びます。

1日3回行う作業をデジタル化やIoT化すれば、すぐ結果が出る事は理解してくださいます。でも、実際に自社の課題になると、「うちは半年に1回しか点検しないんですよね」と言い始めるんです。成果が出るかどうか分かるのは半年後、次の検証は1年後になって、自分事になった途端、見えなくなってしまうんですよね。

私自身もそういう部分はあるので、その気持ちはよく分かります。だからこそ、「まずは結果が早く出る所から始めましょう」とお伝えする事が大切だと思っています。

松下享平
松下

「外圧」を味方につける 組織変革を加速させる社外評価

改善策でもう一つ大事にしているのがモチベーションで、私は「外圧」を使う事をよくお伝えしています。日本人は特に外圧に弱いんですよね。

社内で褒められるよりも、「あの会社の、あの取り組みはすごいらしい」と社外で評価されると、「うちがやっている事って、実はすごかったんだ」と認識が変わります。実際には「5万円で作った仕組みなんですけどね」と、本人たちはボソッと言うんです。

そうした評価をうまく活用すると、周りが自然とサポートしてくれるようになります。「すごい事をやっている人たちなんだ」と社内で認識されると、「うちの別の部署で困っている事も改善してくれませんか」と新しい相談につながるケースもありますね。

松下享平
松下
入山章栄
入山
ソラコムはIoTサービスなので、たとえばエンジニアの一部部署だけで取り組みたいけど、周りからは「何をやっているんだろう」と思われる事もありますよね。

でも、ソラコムを使った事例が外部で評価されて、「あの会社の、あの部署の取り組みはすごい」と話題になると、急に幹部が「実は俺も応援していたんだよ。ソラコム、いいよね」と言い始める(笑)。

そうなんですよ(笑)。私たちが開催している「SORACOM Discovery」で、いろんなお客様の事例をご紹介する理由もそこにあります。

たくさんの方が参加されるイベントなので、その場で「うちの会社の事例が紹介されている」と分かると、皆さんすごく嬉しそうなんですよ。

松下享平
松下
入山章栄
入山
ソラコムは、エンジニアリングの世界へ初めてITやAIを持ち込んで、若い会社でイベントをやるから「ついに俺たちのソラコムがやってくれた」という気持ちにもなりますよね。

「SORACOM Discovery」には、日本中の大手・中堅企業のエンジニアのおじさんたちが集まって、その場で自社の取り組みが紹介されると「初めて認められた」という感覚になるんですよね。

私たちのイベントではあるんですけど、私たちが主語ではなく、「お客様が、こんな成果を実現しました」という話を中心にして、その横で私たちが少しだけ寄り添う形で紹介するようにしています。
松下享平
松下
本当に外圧は大事ですね。メディア業界は、ずっと同じ会社で働いている方が多い一方で、私はデジタルメディアへ転職してきた人間なので、社内のデジタル担当者も本当は勉強していて、分かっている事がたくさんあります。

でも、自分たちで言ってもなかなか通じない。そういう時に、外部の私が呼ばれて同じ話をすると、「なるほど」と聞いてもらえる場面はあります。

松浦シゲキ
松浦
入山章栄
入山
「松浦さんの話なら聞こう」となるわけですね。
社内の方からよく脅されるんですよ。「うるさい編集の人や小うるさいおじさんがいる」とか、「すごい剣幕で最前列に腕組んでるかもしれないけど、気にしないでください」と言われる事もありますが、私は「大丈夫です。全く気にしません」と返しています(笑)。
松浦シゲキ
松浦
入山章栄
入山
リアルすぎますね(笑)。
でも、実際に何か言われた事はないですね。
松浦シゲキ
松浦
入山章栄
入山
最前列で腕を組んでいるおじさん、いますよね。威圧感がすごいから、やめてほしいですよね(笑)。
ものすごいプレッシャーで、「お前は何を言うんだ」ぐらいな感じでいるんですよ(笑)。
松浦シゲキ
松浦
入山章栄
入山
講演が終わった後に話すと、「良かったよ、今日の話」って、すごくいい人だったりするんですよね。
社内で怖がられている人ほど、その場では手を挙げないんですが、講演が終わった後にたくさん質問してくださるんです。

そこで信頼関係が生まれて、「じゃあ、こういう形で進めていきましょう」と次の話につながるので、とても大切な事だと思っています。

松浦シゲキ
松浦