松下 享平
- Kohei Matsushita -
株式会社ソラコム テクノロジー・エバンジェリスト
松浦 シゲキ
- Shigeki Matsuura -
メディアコンサルタント・コミュニケーションプランナー
入山 章栄
- Akie Iriyama -
浜松町Innovation Culture Cafe マスター
経営学者
田ケ原 恵美
- Emi Tagahara -
浜松町Innovation Culture Cafe 見習い店員
目次
株式会社ソラコムでテクノロジー・エバンジェリストを務める松下享平さんと、メディアコンサルタント・コミュニケーションプランナーの松浦シゲキさんを迎え、「サポート」をテーマにディスカッション。課題解決へ導く伴走の在り方や、自立を促す支援の考え方について、経営学者・入山章栄さんが迫ります。

その人たちがインプットできて、「次は課題を解決しましょう」となった時、優先順位の付け方や進め方について、お二人はどんなアドバイスをされる事が多いのでしょうか?
これはエンジニア、特にクラウドやWeb業界ではよくある考え方ですが、自分のポジションや困っている事、できる事を発信し始めると、「自分は何者なのか」が伝わる自己紹介になります。
それに、小さくてもヒーローになれるんですよね。エンパワーメントにも近い話ですが、小さなヒーローを少しずつ作っていくと、その人ができる事もだんだん増えていきます。
優先順位で言えば、まずは「アウトプットしましょう」という所からスタートしてもらいます。それが課題解決に直結するかは分かりませんが、私はまずそこから始めてもらう事が多いですね。


たとえば3カ月で私のやり方をコピーできて、3カ月後に契約終了となり、社内に私のコピーが生まれるなら、それが一番理想です。
だから最初から課題解決の方法も含めて、自分が伝えられる事は全部伝えています。「早く私との契約を切ってください」という気持ちで話しているんです。
それを理解してくださる方ほど、課題解決の順番も最初から頭に入れながら進めてくださる印象があります。
























































そうなると、業務をきちんと残しておかないと引き継ぎもできません。
そういう状況でもちゃんと回る仕組みを作る事が大前提で、「自分のコピーを作ればいい」という考え方も、そうしたキャリアが土台になっていますし、周りも含めてそういう動き方をしていたと思います。


でも、それ自体に大きな価値があるわけではありません。価値を作り出すのは、その周りにいる人だと思っています。そうでなければ、「人間はいない方がいい」という話になってしまいます。
技術はいろいろな所に存在していて、その技術に価値を与えるのは人なんです。
いろいろなものをつなげる仕事をしているが故に大変ですが、つながった先にあるのは「誰かが笑顔になっている」みたいな話が多いので、結果的に人の話が多くなるのだと思います。









一方で、目の前のデータがある程度貯まってからでないと考えられない方もいて、アプローチも人それぞれ違います。その中で、お二人は長期的な視点を強くお持ちだと感じました。だからこそ、普段から気を付けている事があれば、ぜひ伺いたいです。
短期的な課題解決は、一つひとつクリアできるので達成感がありますが、その分、時間も体力もどんどん使ってしまうんです。成功体験というエナジードリンクを飲み続けている状態なので、その間は頑張れますが、気付いた時には体力も精神力も使い果たしている事が少なくありません。
若いうちは、HPもMPも満タンだからまだ大丈夫ですが、ずっとそうではいられないからこそ、バランスを考えながら進めた方がいいと思っています。





















最近、AIの世界では「ハーネスエンジニアリング」という考え方があります。「何もするな」と制限するのではなく、「ここまではやっていい」と範囲を決めておく考え方です。





















だからこそ、あらかじめ「ここまで」と決めておく。約束事を作っておく考え方が大切なんです。


それができないと、小さな成功体験を積み重ねながら暴走してしまい、壁にぶつかるまで走り続けてしまいます。2000年代前半は、実際に人をどんどん使い倒す働き方が当たり前でした。私自身もその一人で、「今日はいつ帰れるんだろう」と思いながら働いていました。だからこそ、その線引きは本当に大事だと思います。


私たち自身の存在も、できる限り早く薄くしていく。つまり、私たちがいなくても回る状態を作る事ですね。その先にある理想は、小さな成功体験さえ意識しなくても自然と組織が回っている状態なのだと思います。





















まず松下さんにお伺いしたいのですが、改めてお客様と伴走する時に大切にしている事は何でしょうか?





















段々ついてきてくださると、先ほどお話しした「存在を薄くしていく」段階になります。その後は、自分が後ろに回って背中を押す役目です。子どもが自転車に乗る時、お父さんが後ろから支える感覚に近いですね。
エバンジェリストは、日本語では「伝道師」と訳されます。私は伴走の中でも、最初に前を歩いて方向を示す役割が大きいと思っています。


最終的には自立していただかなければいけないので、どこまで答えを言わずにいられるかを意識しています。考え方や方程式も含めてご本人に考えていただいて、自分の中で「AとBがあればCが導き出せる」状態まで持っていく。その横でうなずきながら見守る事を大切にしています。










































その上で考えてもらい、それでもどうしても答えにたどり着けないなら、半分くらい答えを伝える事はあります。結局は、そのバランスなんでしょうね。





















外部環境の整理くらいなら、今のAIは80点くらいの答えを出してくれますし、まずはその80点を取りに行けばいい話です。































































知識を体験し、知恵として身に付ける所まで行かなければ、次につながりません。「何するんだっけ?」「火を起こして次、何やるんだっけ?」みたいな話になる事が多々あります。
歴史も同じです。「何年に何が起きた」と覚えるだけでは知識です。その出来事がなぜ起きたのか、その背景まで理解していれば、ビジネスを含めたさまざまな場面へ応用できますので、知恵の身に付け方が大事だと思っています。

























AIになってからは、その傾向がさらに強くなっています。適切な言葉を入力しないと、適切な答えは返ってきません。だからこそ、先ほどお話ししたヒントの部分として、「こういう言葉があります」「こういう考え方があります」と伝える事が重要になっています。





















このラベルが無いと、「生産ラインに付けたい」「工場の機械に付けたい」と、それぞれが別々の話だと思ってしまいます。「それは後付けIoTという考え方ですよ」と伝えるだけで、「じゃあ、どうすればいいんだろう」と考え始められるようになりますし、「何を付ければいいですか」と具体的な質問もできるようになります。
こうした考え方は、AIだけでは整理してくれません。むしろ情報を増幅させてしまう事もあるので、「今あなたがやりたい事は、この言葉に集約されています」と整理して伝える役割が、これからますます重要になると感じています。









実際、日本全国にユーザーグループがあって、各拠点で年に1〜2回ほどイベントを開催しています。今は10〜11拠点ありますが、回っている中で、「最近あまり話していませんよね」と会話する方がいると、「ああ、順調に進んでいるんだな」と思います。


仕事なので、すべてが上手くいくわけではありませんし、悪い結果になる事もあります。でも、「こういう原因があって、こういう理由で今回はうまくいきませんでした」と説明できるなら、戦術を理解できている証拠です。逆に、「数字が悪いですね。どうしましょうか」と原因も分からない状態では、まだ自立できていないと思います。





















もちろんビジネスなので、成果が出れば評価されますし、給与にも反映されます。でも、マネジメントの立場で見ると、一番大事なのは「失敗しました」ときちんと言える事だと思っています。





















































だから外から働きかけて、「開けましょうか」と声を掛けるんです。開けてみると「これはひどいですね」となる事もあります。その状態を見ながら、「なぜこうなったんでしょうね」と笑顔で一緒に片付けていく。それが大事だと思っています。






















